はじめに

会社員の方は、50代の半ばくらいまでには、定年あたりの自分の立場、職位をだいたいわかってしまうそうですね。部長・課長で終わるならば、役職定年が待っています。取締役まで行くことができれば、定年がなくなり、もう少し会社に残れるでしょう。とはいっても、取締役になれるのは、ほんの一握りです。

多くのケースは、60歳で定年を迎えることになると思います。つまり50代半ばで、会社での職位をかけた競争は、ほぼ決着が付いたことになります。ですので、晴れて定年を迎えることは、見方を変えると長い競争からやっと解放されることを意味します。過去を振り返れば、受験競争からはじまり、ずいぶんと長い競争を続けてきました。もう競争をしなくてもいいと考えれば、じつに幸せな生き方ができると思いませんか?

その幸せな生き方が、定年後に待っているのです。今回は、競争から一歩引いたときの幸せな定年後の生き方について考えてみましょう。


会社員時代の競争はストレスがいっぱい

会社員時代は、競争することを強いられていました。同期の中で誰が出世をするのか、営業成績での競争、ライバルとの競争、同業他社との競争。競争は、悪いことではありません。努力をして、自らを磨き、能力を高めることができます。そして競争に勝ったときには何ものにも代えがたい達成感・充実感を得られます。

しかし、競争をしているときは苦しいですし、ストレスもあります。とくに会社員としての競争は、人間関係で神経をすり減らせることが多いです。これは会社員ならば、ほぼ間違いなく体験したことがあるのではと思います。

長時間労働や、嫌な仕事をしなければならないこともあるし、苦手な上司ともうまくつき合わないと競争に負けてしまうこともあるでしょう。反対に、なかなか思うとおりに動いてくれない部下を叱咤激励するなど、さまざまなことを経験したと思います。理不尽な競争の現場は、精神衛生面ではけっしていいとは言えません。

しかし、定年後は、競争から外れてしまうのですから、気楽になります。責任も軽くなって、人間関係も楽になるのではないでしょうか。再雇用では、非正社員になることが多いので、出世とはほとんど関係がなくなります。寂しいと思うかも知れませんが、さまざまなしがらみから解放されるので、職場の和や自分の働きがいを優先して考えることができます。

リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(2019年)」の調査によると、仕事に満足している人の割合は、60歳を超えてからの方が増加しています。満足度が上がるのは、競争などのストレスが少なく、やりがいのある仕事ができる状況になったことが大きな理由ではないかと、私は思います。

「十分」と考えてムリをしない生き方に切り替える

たとえば、他者と自分を比べなくなると幸せになれます。他者と比べると自分は不幸に思えてしまうことがあります。他者と比較して、「あの人がうらやましい」なんて思うと、それだけで幸福度が下がってしまうものです。これは心理学でもよく言われています。

実際に、他者と比較するのをやめるなんて、出家でもしないと難しいと思います、しかし、定年後は少なくとも競争から抜け出すことができるので、そうしたことも減り幸福感は増します。また、定年後は「十分」という感覚を持てることもいいのだと思います。

「十分」というと、保守的でチャンスをつぶしてしまうことにも繋がるように思いがちですが、必ずしもそればかりではありません。「あきらめ」というのとも、ちょっと違って、「己を知る」ということかな?と思います。

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