はじめに
節税目的で子の配偶者を養子にする場合も
資産家の家族を例にすると、両親が子の配偶者を養子に入れることがあります。そうすると両親の相続権がなかった子の配偶者も両親の相続人として権利を持ちます。のちに、子が離婚して夫婦関係がなくなったとしても、離婚と同時に自動的に養子縁組が離縁されることはなく、子の配偶者は両親の養子に入ったままになっています。これを望まない場合には、子の離婚のときに両親との養子縁組も別途離縁する必要があります。
再婚で子供がいる場合は養子縁組をしていないと相続権がない
養子縁組をしていないことで相続が発生すると何が起こるのでしょうか。
養子縁組をしていないと、たとえ親子同然の生活をしていたとしても相続人にはなれません。たとえば、お互いに元配偶者との子供がいて再婚した場合、お互いの連れ子には再婚した相手との親子関係はありません。子供が小さいうちは同じ戸籍に入っているので相続関係があるように見えるかもしれませんが、連れ子を相続権のある親子関係にするためには、新しい配偶者との養子縁組が必要です。
子供が親の介護をして葬儀、納骨を済ませた後相続手続きをしようと戸籍を集めてみると、養子縁組をしておらず、戸籍上全くの他人だったという話もあります。そうすると、亡くなった親の相続手続きが何もできなくなります。
親と住み続けてきた家の名義変更ができない。預貯金の解約もできない。手続きのできる相続人を見つけて来るしかなくなり、心身共に疲れ果ててしまうでしょう。遺された人にそんな思いをさせたいでしょうか。
養子縁組が必要かどうか考える前にやっておくこと
今もし、あなたやご両親に何かがあったとすると、(1)相続人は誰か(2)財産は何があるのか、この2つがわからないと先にはすすめません。
「(1)相続人は誰か」に関しては出生から現在までの戸籍謄本を各役所で取得し確認していかなければ戸籍上の相続人の確認ができません。この戸籍の取得は生前から取得しておくことができます。
「(2)財産は何があるのか」に関しては、相続人が知らない預貯金、不動産、保険などを探すことは非常に大変で、発見できない場合も多いです。最低限、財産として何がどこにあるのかを分かるようにしておくことをお勧めします。
そして、(1)で家族関係(2)で財産状況を確認することで、養子縁組が必要かどうかを検討することもできます。
ただし、養子縁組に関しては他人が相続人になる権利を持つことになり、相続関係や法定相続分の変動が出てくることなので、現状の相続人からの反発もあり得ます。自分で判断せず専門家の意見を取り入れながら検討していきましょう。
行政書士:藤井利江子