はじめに

グローバルな投資戦略

少し視野を海外に広げなおしてみると、中国では駐豪銀行にあたる中国人民銀行は6月に利下げに踏み切りました。中国では最優遇貸出金利(ローンプライムレート)が政策金利と位置付けられていますが、期間1年、5年超のいずれも下げました。昨年8月以来、10か月ぶりの引き下げとなりましたが、背景には中国経済の減速懸念があります。

グローバルに投資している運用会社の観点からすると、リスク分散のために投資資金は世界中に分散をします。世界中といっても各国を細かくみていくリソースはないため、まずは世界をエリアごとに考えます。当然、中国も日本もアジアという地域で考えます。アジア地域にお金を投じる際に、中国の景気が減速すると考えれば、中国に投資していた資金の一部を他のアジアの国に移すわけですが、そうなると前述のように好材料が揃っている日本に移そうということになるわけです。

また、ロシアがウクライナに侵攻したように、中国も台湾への軍事侵攻の可能性は数年前から指摘されており、地政学リスクが高まったと考える投資家はやはり中国への投資資金の一部を他のアジアの国に移すことが考えられます。

実際に「投資の神様」と称されるウォーレン・バフェットは先月、中国の電気自動車大手BYDの株を売却する一方で、商社株を筆頭に日本株へのさらなる投資の可能性を語りました。また、世界最大の資産運用会社である米国のブラックロック社のラリー・フィンクCEOも「中国株から日本株に資金を移す動きが見られる」とコメントしています。

タイミング次第では激変注意

このように、足元の日本株の上昇について、様々な要因を1つずつみていくと、いわゆるバブルのように根拠なき熱狂によって株価が高騰しているわけではないということが理解できるかと思います。それならば、今回の日本株の上昇局面には安心して乗っかっていればいいのかというと、そういうわけにもいきません。

たとえば、米国では急速な利上げによってインフレ率の伸びはピーク時に比べれば鈍化したものの、その副作用として中国同様に景気減速懸念が強まっています。実際、市場ではあと1回利上げをしたら、それ以降は金利を据え置き、年明けには利下げ局面に転換するという予想が最も主流となっています。一方で、日本では徐々に物価上昇率が高まってきていることから、日銀内部にも現在の大規模金融緩和を一部修正するべきといった声が出てきています。

仮に米国が金融政策を緩和方向に転換する一方で、日本が引き締め方向に動けば、為替は円高方向に転換すると考えられ、前半で上昇の要因としてあげていた話が全て逆転していくことが分かります。また、割安修正を期待する買いについても、ここまで株価が上昇してくれば、ある程度は割安感がすでに修正されてしまっているため、これ以上の押し上げ要因にはならないとも考えられます。

足元の急騰に一喜一憂するのではなく、自分が当初決めた投資スタイルを貫くという頑固さが求められる局面なのかもしれません。すでにつみたて投資をしている方は、特に下心を出して入金額を増やそうとか、バブル崩壊の急落前に全て解約してしまおうといった、極端な投資行動は避けるべきだと考えます。

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