はじめに
会社は誰のもの?
藤川:ほかに、「配当金」を目的に株を持っている人もいます。不動産でいえば、家賃収入みたいなものです。
有野:配当金と値上がり益って、意味が違うんですか?
藤川:たとえば、株価が500円から1,000円に上がったとします。500円で100株買ったのなら、その株を5万円で購入したことになりますよね。その後、株価1,000円の時に売却すれば、100株なので10万円になりました。5万円が10万円になったことになるので、差し引き5万円の儲け。これが「値上がり益」です。
有野:それはネットオークションも一緒ですね。5万円で買ったフィギュアが10万円で売れたのと同じで。
藤川:原理は同じですね(笑) 一方、「配当金」は、企業が毎年、株主に対して配るお金のこと。どれくらいの配当を出すかは、会社によって変わります。先ほどのキャピタルゲインに対して、配当収入は「インカムゲイン」。家賃収入などもインカムゲインですね。
有野:なるほど。売って手に入るお金の値上がり益を狙っている人ばかりやと思ってましたが、持ってたら毎年もらえる配当狙いの人もいるんですね。
藤川:株価の上下を気にせず、年金みたいな感じで、配当金をもらいたい、という投資家も一定数います。
有野:そっちの方が、会社にも自分にもよさそうです。どうせ買うなら、配当金を出している会社のほうがいいじゃないですか。
藤川:おぉ~、鋭い! では、配当金はどこから捻出されると思いますか?
有野:当然、会社の売り上げの中からでは?
藤川:またまた鋭い!
有野:株は素人ですけど、それくらいは何となくわかりますよ(笑)
藤川:ただし、売り上げがあっても利益がないと配当は出せないので、正確には「利益の中から」です。毎年きちんと利益を稼ぎ出していないと、基本的に配当金はずっと出すことはできません。また、「業績が回復したから、今期から配当を出します」という会社もあれば、「業績が悪化したので、今期は配当をしません」という会社もありますね。
有野:それはそうか。格好つけて配当出すために、会社が傾いてもしょうがないですもんね。株主はその会社に頑張って欲しいから投資してるんやもんな。でも、利益が増えたらその分、人を増やそうとか、新しく設備を買おうとか考えそうやから、利益ってそこまで増え続けるものじゃないんじゃないですか?
藤川:3度目の「鋭い」ですね! それは、従業員と株主、あるいは会社の成長など、さまざまな要素を天秤にかけて、経営者が何を重視するかによって変わってきます。ひいては、「会社は誰のもの?」という議論にもつながりますね。「会社は誰のもの論」は、かなり昔から議論されてきたテーマです。
有野:なんとなく、会社って経営者である社長のものやって思ってました。
藤川:仮に、経営者が「会社は従業員のもの」と考えて、利益を賃金アップにばかり回していると、株主からしたら「せっかく会社が成長すると思って応援(=出資)したのに、儲けても配当出さないのかよ」となりますよね。そうすると、配当金狙いの人たちがその株を売ってしまって、株価が下がりかねません。
有野:なるほど! 確かに配当金が欲しくて買った株やったら、そうなりそうですね。
藤川::だからといって、株主への配当ばかり出して従業員の給料を上げないと、それはそれで従業員の不満が溜まって仕事へのモチベーションが下がり、利益が減ってしまうかもしれません。経営者は、利益成長と従業員への給与、株主への配当という3要素のバランスを取りつつ、会社を経営していく必要があるんです。
有野:おっきい会社の社長さんって大変やなぁ。小さい会社なら、そこまで心配せんでもよさそうやのに。
藤川::株式を上場させるということは、会社を成長させて、株主を儲けさせることが求められますからね。