はじめに

売上を伸ばしたいはずの販売チャネルに逆風

決算短信だけでもかなりの情報量ですが、同時に公表されている決算補足説明資料も見てみましょう。

画像:伊藤園「2024年4月期 第1四半期 決算補足説明資料」より引用

①飲料カテゴリー別販売実績
飲料の中では、圧倒的にお茶系の売上比率が高いことが分かります。ただし、販売ケース数は全体的に減少しています。

②飲料容器別販売実績
こちらも小型ペットボトルだけわずかにプラスですが、ほかは前年比で販売数が減少しています。

③リーフ・その他カテゴリー売上増減率
自分で作るタイプの商品は、すべて前年比で販売数はプラス。

④飲料チャネル別構成比
自動販売機の構成費が1pt低下し、前年比で10%減少しています。

飲料メーカーは2022年に続き、2023年も値上げをしており、その影響で販売数量が減少しています。こちらの決算補足説明資料からは、消費者が、割高な缶やペットボトルではなく、割安な、ティーバッグや茶葉で飲料を作る節約志向が垣間見えます。

また、自動販売機での販売は、値引きされないため粗利率が高くなり、メーカーにとってはもっとも売上を伸ばしたい販売チャネルですが、残念ながら思うように伸びていません。節約とエコのふたつの観点から、マイボトル派が増えていることも逆風なのでしょう。

伊藤園の決算資料からは、飲料業界の苦悩と工夫が垣間見えます。原材料高による価格転嫁は必須であるため、それによる販売数の減少をいかに防ぐか、また多少価格が高くても、リピート買いされるような魅力的な商品を提供できるか、そのふたつが大きな課題のようです。

思いのほか好調だった第1四半期決算をうけて、株価はだらだら続いた下降トレンドから反転の兆しを見せています。営業利益の上期予想に対する進捗率は79.9%。第1四半期にやや利益が偏重しやすい季節性を差し引いても、上方修正期待を持てそうです。

画像:TradingViewより

※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。

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