はじめに

不労所得などあり得ない

一方で、投資を過大評価しすぎる方もいます。これはiDeCoやNISAだけの話ではありませんが、情報を浴びるうちに気持ちが大きくなり、判断を誤っていると言わざるを得ない方もいます。

例えば、インターネット上には投資でとても成功した、大きな富を築いたという方が登場したりします。仮にその情報に嘘がないとしても、それがそのまま自分が再現できるかというと、そんなことはないでしょう。

あるいは、過去の実績がとても良かった投資手法があったから、これであなたもリッチになりますと謳われているものもありますが、未来は誰にも分かりません。あまりにも過大な期待をしてしまうのは、危険だと考えるべきでしょう。

さらに投資によって手に入れた富を「不労所得」と称し、楽してお金が手に入るとアピールすることにも違和感を覚えます。またほったらかしとか、無理のない金額でといった耳障りの良い言葉を連ねているのも、誤解を招く表現ではないかと考えます。

もし無理のない金額として、5,000円の積立を実行したとしましょう。10年続けても投資元本は60万円です。もちろん10年もの間、努力を重ねたということは価値がありますが、残念ながら60万円の投資元本では人生は変わりません。

今iDeCoやNISAで投資をするのは、決して働かなくてもよいくらいお金持ちになるためではありません。インフレにより購買力を失った現金しか手元にない状態を避けるために、経済成長の恩恵を受け購買力を維持するためです。

夢がないと言われるかも知れませんが、豊かな暮らしを手に入れるという夢を実現するためには、具体的にいつまでに、いくらくらいの資産が必要なのかを見積もり、それを手に入れるために、いくつかやるべきことを粛々と実行する必要があります。

基本的には、(1)収入を増やすこと、(2)支出を減らすこと、(3)投資に回すお金を増やすこと、(4)運用利回りを高めることです。この中で、(4)の運用利回りだけは自分の努力だけでは実現しないので、先の3つの項目に力を注ぎます。

(1)の収入を増やすには、働き方を考える必要があります。モチベーションは大切ですから、やりがいのある仕事であることも重要です。スキルを磨くこともマストでしょう。社会保障完備の職場はもちろんのこと、福利厚生が充実していれば生涯賃金も上がります。

(2)の支出を減らすには、まめに無駄を省いて節約を重ねます。やみくもに節約をしては、人生の喜びを見失いますから、自分にとってなにが大切なのかを見定めることも重要です。保険や住宅ローンなど、固定費の削減は非常に効果が高いですが、不勉強のまま取り組んでしまっては失敗します。

また(3)の通り、投資に回すお金はできるだけ増やしていく必要がありますが、将来へ回すお金は、その用途によって元本が割れることがない金融商品で運用する必要もあるので、お金の置き場所は慎重に選びます。

投資をする際、ある程度の期待リターンと想定されるリスクは分かりますから、どうしても積立額が少ない場合は、ハイリスク・ハイリターンの商品を選ぶしかありませんが、積み立てる金額が一定以上ある場合、狙うべきリターンはそこまで高くせず済むので、結果的にリスクを抑えた運用が可能になります。

ライフプランは将来を固定化するために考えるものではなく、変動することを前提に、それでも進む方向性を間違わないように、と立てるものです。そこでは経済的裏付けが必要なので、必然的に資産形成のプランも立てる必要があります。

そして、その資産形成をより効率的に行えるように国が整備してくれた制度がiDeCoとNISAなのです。細かいところにあまりとらわれずに、俯瞰して考えた方が、より良い結果に結びつくのではないかと考えます。

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