はじめに

退職金の運用はデメリットを理解してから

退職金の運用は、メリットだけを見て始めると、老後生活に大きな影響を与えかねません。退職金を運用する場合のデメリットは、資産運用にはリスクがある、ということです。

2008年9月に発生した100年に一度の金融危機と呼ばれるリーマン・ショックをご存じの方も多いのではないでしょうか。2007年7月には約17,300円だった日経平均株価は、2008年10月には約8,600円にまで下落しました。日経平均はあくまで目安で、実際の株価とは異なりますし、株も売却しなければ損失が確定にはなりませんが、大切な退職金の価値が半分近くになってしまった時、あなたは耐えることができるでしょうか?

退職金はまとまった金額を受け取れるため、金融機関では退職者向けのプランが準備されている場合があります。プランの内容を理解しないまま資産運用を始めて、投資した退職金を大幅に減らしてしまっては元も子もありません。

資産運用にはリスクがつきものであることをきちんと理解した上で始めましょう。退職金で資産運用を始める場合、注意点は3つあります。

(1)リスク許容度を確認する
自分はどれくらいのリスクが許容できるのか確認したうえで、資産運用を始めましょう。大きなリターンを求めると、リスクも大きくなります。退職金で運用を始めた場合、労働収入を得られる期間が短く、大きな損失があったときにリカバリーしにくいため、リスク許容度は低くなりやすいといえます。

(2)資産運用の配分を検討する
退職を機にライフプランを見直し、資産運用の配分を検討しましょう。そして、退職金を含めた家計の金融資産を「生活資金」「使用予定がある資金」「余裕資金」に仕分けし、「余裕資金」から資産運用を始めましょう。退職金という、まとまった資金があったとしても、一気に大きな金額で運用をはじめるのではなく、時間と資産を分散しましょう。

(3)不測の事態に備える
不測の事態に備えつつ、退職金を運用していくことが重要です。高齢化が進み、資産寿命を延ばす手段として運用のニーズも高まっています。しかし、年齢を重ねるほど病気やケガ、認知症発症の可能性が高まります。

金融機関での手続きは原則「本人」がしなければなりません。必要資金が健康上の都合等で手続きができず、出金できなくなっては大変です。このような事態に備え、あらかじめ運用資金とは別で資金を確保しましょう。また、家族に利用している金融機関や保有している運用商品を伝えておくといいでしょう。ネットバンキングを活用すれば、直接店舗に出向かずに手続きができるので、外出がしにくくなったとしてもスムーズに手続きを進めることができます。

運用と並行して、万一のことがあった時の準備もしておくことが本人と家族の安心につながります。

資産寿命を延ばし、ゆとりあるセカンドライフを

冒頭でも申し上げた通り、人生100年時代を生き抜くには、資産寿命をいかに延ばすかが重要なポイントとなります。運用にはリスクはつきものです。退職金は老後生活に使うつもりであれば、リスクをとるのが怖くなる方もいらっしゃるでしょう。

しかし、そのリスクをきちんと理解すれば、退職金を運用するメリットを享受することが可能となります。人生100年時代をゆとりあるものにするために、退職金の運用を一つの手段として活用されてはいかがでしょうか。

【監修】伊達有希子/ファイナンシャルプランナー(CFP、1級FP技能士)

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