はじめに

「データセンターパーク」の実現に動く北海道

北海道幌延町のオトンルイ風力発電所

実は、北海道でも同様のバブルが起きる可能性があります。2023年3月、半導体製造を手掛けるラピダスは、北海道千歳市に半導体の量産工場を建設する計画を打ち出しました。総投資額は約5兆円。すでに、千歳市周辺では不動産開発が進められ、周辺地価が大きく上昇するなど影響が起きています。

また現在、クラウドサービスの拡大や生成AIの開発加速を背景に、データセンターの建設が加速しています。データセンターは、通信用のサーバーや関連機器を置くための建物。通信設備はもちろん、空調・冷却設備、耐震・耐火設備、大規模電力・非常用電力の供給設備、ハイレベルのセキュリティーなど、運用に不可欠な設備が備わっています。

クラウドサービス市場の世界的な拡大に加え、「生成AI(人工知能)」の普及によって、データセンターの需要は高まるばかり。政府が官公庁におけるクラウド環境「ガバメントクラウド」の整備を推し進めていることも、データセンターの需要拡大に一役買うことになりそうです。「情報通信白書」によると、日本国内のデータセンターの市場規模は2021年時点で約1兆7300億円。2025年には3兆円に迫ることが予測されています。企業のデータセンターへの投資も、2023年の約3200億円から、24年以降に5000億円を超える水準まで拡大する見込みです。

こうした状況を背景に、注目を浴びているのが北海道です。データセンターには膨大な電力を消費しますが、北海道には広大な敷地はもちろん、水力や風力といった再生可能エネルギーが整備しやすいのも特徴。また、データセンター内は大量のサーバー関連機器が置かれるため、大規模な冷却設備が不可欠ですが、北海道では外気を取り込むだけで冷却が可能なことも魅力として挙げられています。北海道サイドも「北海道データセンターパークの実現」を掲げ、関連企業の誘致に積極的に動く方針です。

大規模な工場やビル、発電設備の建設は環境破壊をともなう可能性があるので、地方自治体との交渉によっては、計画が頓挫する可能性もあるでしょう。とはいえ、政府はデータセンターが一極集中している現状を問題視しており、今後は地方への分散が確実な情勢です。すでにTSMCの第一工場建設がほぼ終わっている九州と比べると、北海道のデータセンターパーク実現にはまだ時間がかかりそうですが、バブル発生の泡がプクプクと生まれていることは間違いないでしょう。

九州にせよ北海道にせよ、さまざまな需要発生はこれからが本番。投資という観点では、現在はバブルのタネが芽吹く前段階に当たります。これから、そのタネを探し当てる作業が本格化するのではないでしょうか。

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