はじめに

貯蓄があれば資産運用は必要ない?

毎年着実に貯蓄を増やしてきた相談者さま。貯金も2,000万円あることで、それなりに安心感をお持ちです。資産はすべて現預金でお持ちであり、ご夫婦ともに資産運用はされていません。

メディアやSNS等でNISAについて目にする機会が増え、何となくやった方がいいのかもしれない、と感じることはあるそうです。しかし、いざ自身で取り組むとなると、資産運用についてよくわからないのもありますが、「自分たちにとって本当に必要なことなのか、あまり必要性を感じられていない」とお話されていました。順調に貯蓄を増やしてきた方ほど、資産運用を行う必要性をあまり感じられないかもしれません。

多くの方にとって資産運用を行うメリットは大きい傾向にありますが、必要性の有無は家計の状況やライフイベントによって異なります。相談者さまのケースでは今後資産運用などの対策が必要なのかどうかを判断するために、ライフプランを作成し、今後の家計の状況をみていきましょう。

ライフプランで将来かかるお金の見える化

お子さんの進路予定や住宅購入予定はまだ具体的に決まっていない、とのことでしたので、ヒアリングをもとに下記の条件を加味したライフプランを作成しました。

・進路予定:小学校まで公立。中学、高校、大学共に私立(第一子:文系、第二子:理系)。大学は自宅から通学
・習い事:小学校の間は1人につき2個。中学受験のため塾を想定
・住宅購入予定:新築マンション 購入金額6,000万円 住宅ローン借入額6,000万円 35年ローン 元利均等返済 変動金利0.6%を想定 月額負担額158,000円
・自動車買い替え予定:2回

ライフプランを作成し、見えてきたのが貯蓄額に対する影響です。住宅ローンの返済が始まると、住居費は2倍以上に増えます。これまで年間約200万円のペースで貯蓄できていましたが、年間貯蓄額は100万円弱に減少します。

教育費負担の影響も大きいご家庭です。小学校6年間の学校外費用(習い事費と塾費用)として、1人当たり約250万円かかる想定としました。中学・高校と私立へ進学する場合、公立へ通う場合と比較してかかる教育費は約2.5倍、1人につき約450万円が上乗せで必要になると想定されます。

上のお子さんが私立中学へ進学すると年間収支はマイナスへ転落し、貯蓄の取り崩しでカバーしていくようになります。取り崩し期間は上のお子さんが大学を卒業するまでの10年間続き、年間の取り崩し額は最大で約200万円となります。

もともと貯金が2,000万円あったため、家計全体として赤字へ転落することなく、二人のお子さんは大学卒業を迎えることができます。しかし、下のお子さんが大学を卒業した時点で貯金額は半分以下に減少しています。

実は潜んでいる破綻リスク

教育費がかかる期間を乗り切ることができれば、そこから老後資金の備えを始めればいいのではないか、退職金で貯蓄額も回復するのではないか、と考えている方も多いでしょう。実際には、定年以降は収入が減少する一方で住宅ローン返済の負担は続くことから、思ったよりも貯蓄は増えていきません。

今回のケースでは、このままでは73歳で貯蓄が尽き、家計は破綻してしまうことがわかりました。要因の一つとして、老後への備えを含めた長期的な資産形成の対策が取られていないことが考えられます。このように、長期的な視点でライフプランを作成することにより、本当に問題がない家計状況なのかが見えてくるのです。

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