はじめに
対策を行う前に決めなければいけないこと
このように、きちんと行えば心強い対策ですが、実際に行うには、さまざまなことを決めていく必要があります。
例えば、「遺言書」を作るには、財産をどのように分けるかを考えるために、今亡くなると相続人は誰になるのか、どのような財産を所有しているのかを確認することが必要です。そのうえで誰に何を渡すのかを考えます。
「任意後見契約」は、自分が元気なうちに財産管理をお願いする人を探しておくことが必要です。誰にでも任せられるものではないため、長い期間をかけて信頼できる人を探していくことになるかもしれません。
「信託契約」は、所有している不動産の管理、運用、処分を任せる人を決めるため、慎重に考える必要があります。そもそも信託契約が必要なのかといったことも考えなければなりません。
口座のある銀行をわかるようにしておこう
自身がこれまで大事にしてきた財産にかかわることを決めるというのはとても労力がいることです。そこで、まずは比較的簡単に始められる財産の整理からスタートしてみてはいかがでしょうか。
相続が起こった際に一番困ることは、どこにどのような財産があるのかわからないことです。
ご自身で自分の財産がどこに何があるか把握していますか。例えば銀行口座であれば○○銀行に口座があるとエンディングノートに書いておくだけでも手掛かりになります。
残高まで記入する必要はありません。どこにあるかが分かればそこに行って調べることができるからです。そうすると銀行口座の棚卸ができます。わずかな残高で残したままの銀行口座はありませんか。今のうちに解約しておきましょう。最近はネット銀行の口座をお持ちの方も増えてきています。手掛かりはパソコンやスマホの中ということになります。いざというときにパソコンやスマホ等のパスワードが分かるようにしておくことも大切です。
エンディングノートにパスワードを書き記しておくのか、又はパスワードの保存場所を記入しておくのか、何かの形で残しておかないとご家族の方がとても困ります。それがないと時間、手間、費用がかかり、良いことはありません。
所有している不動産や関連書類を確認しておこう
不動産に関しても、どこに不動産を所有しているのか把握しておくこと、毎年春ごろに送られてくる固定資産の納税通知書(課税明細書)で所有不動産を把握しておくこと、完全ではないけれど、市町村で把握している所有不動産の一覧表(名寄帳)を取得し、課税されていない不動産の確認をしておくことも大事です。
また、所有する不動産の購入した時の売買契約書や、諸費用の領収書、権利証、登記識別情報などの書類が揃っているかどうかの確認も必要です。なぜ必要なのかというと、今後不動産を手放すことになった際に譲渡所得税がかかるかどうかの判断に必要だからです。
財産の整理をしながら次第に心の整理もできれば、自然に終活・相続の対策に入っていけるのではないでしょうか。今できる負担の少ないことから始めていきましょう。
一人では先に進まないことも多くあります。その際は、終活・相続の専門家にご相談することをお勧めします。
行政書士・終活カウンセラー:藤井利江子