はじめに
たとえばこれから金利が上昇するとしましょう。すると、この「額面金額が100円で利率2%の債券」は、間違いなく魅力が低下します。なぜなら近い将来、「額面金額が100円で利率3%の債券」が新たに発行される可能性が高いからです。
そのため、「額面金額が100円で利率2%の債券」は、たとえば98円とか96円で取引されるのです。
そして債券は、償還を迎える時には額面金額で償還金が支払われるので、額面金額よりも安い債券価格で購入した場合、その差額が「償還差益」になり、それを加味した最終的な収益率が、債券の「利回り」になります。債券の利率は償還時まで一定ですが、債券利回りは、債券価格が値上がりすると低下し、逆に債券価格が値下がりすると上昇します。
利回りに値上がり益は含まれない
株式の配当利回り、債券の債券利回りの他にも、「利回り」の概念を用いている投資商品があります。
たとえば投資信託がそれです。投資信託の場合、年1回、もしくは2回設けられた決算日に、前回の決算日から今回の決算日までの運用で得られた収益の一部を、分配金として受益者に還元します。仮に購入した時の基準価額が8000円で、500円の分配金が出た場合、この分配金利回りは6%になります。
でも、同じ500円の分配金で、基準価額が1万円に値上がりした場合、分配金利回りは5%へと低下します。
この分配金利回りが用いられる商品は、基本的に投資信託です。未上場の投資信託に加え、ETFやJ-REITのような、株式市場に上場されている投資信託についても、投資家が購入した時点における取引所価格(J-REITの場合は投資口価格)に対して、得られた分配金の割合を分配金利回りとして表示しています。
利率に比べて利回りはやや考え方がややこしいのですが、基本的には、元本が変動しない預貯金の収益性は「利率」で、値動きに伴って投資元本が変動する株式や債券、投資信託の収益性は「利回り」で表示されると考えてもらって良いでしょう。
ただし、ひとつだけ注意点があります。株式の配当利回り、投資信託の分配金利回りは、あくまでも配当金、ならびに分配金というインカムゲインだけを対象にした収益率であるということです。株式も投資信託も価格が値上がりするものですが、その値上がり益は収益率に含まれていません。