はじめに
債券には4種類の「利回り」があります。前回はこのうち「利率」と「応募者利回り」、「直接利回り」について解説しました。
今回は、「最終利回り」と「所有期間利回り」ついて考えてみましょう。
パート1:「応募者利回り、直接利回りとは? 債券にある4種類の利回り(パート1)
既発債を購入した際の収益性を示す利回り
債券は基本的に、発行日と償還日が決まっています。文字通り、発行日に債券が発行され、その日から金利が付くようになり、償還日にその債券を購入した人たちに対して、償還金が払い戻されます。
この発行日前に設けられた募集期間中に、新規で発行される債券のことを「新発債」といい、発行日以降に債券市場で売買されている債券のことを「既発債(きはつさい)」と言うのです。
前回、このコラムで紹介した「応募者利回り」は、募集期間中に新発債を購入して、償還日まで保有した場合に得られる利回りを指しています。これに対して今回、紹介する「最終利回り」と「所有期間利回り」は、両方とも既発債を購入した場合の利回りを示しています。
債券には償還日が設けられていますが、償還日前でも自由に売却できます。ただし、償還日まで保有すれば額面価格で元本が戻ってきますが、償還日前に債券市場で売却する時は、債券市場で取引されている債券価格で売却することになります。
債券価格の変動要因は3つ
債券価格が変動する要因は、大きく3つあります。
ひとつは市場金利の動きです。債券の利率が3%だとしましょう。その時、市場金利が4%、5%というように上昇していたら、毎年3%の利子しか受け取れない債券の魅力は低下します。その結果、利率3%の債券は売りが増えて、債券価格が値下がりします。また、それとは逆に市場金利が2%、あるいは1%というように低下したら、利率3%の債券が持つ魅力は高まりますから、買いが増えて債券価格は値上がりします。
次に格付けです。格付けとは、その債券が元利金を払い続けられるかどうかを、特定の記号で示したものです。
格付が悪化すると、その債券を発行して資金を調達している政府、企業などの発行体の財務が悪化し、ゆくゆくは「元利金の支払いが滞るのではないか」という懸念が強まった結果、債券の売り圧力が強まります。
逆に格付けが改善すると、その債券に対する信用力が高まり、投資家の買いが集まりやすくなります。もちろん前述した、市場金利との兼ね合いもありますが、基本的に格付け悪化は債券売り、格付け向上は債券買いの動きにつながります。
最後に債券発行後の時間の経過です。前述したように、債券は償還日を迎えると額面価格で償還金が支払われます。そのため、償還日が近づくにつれて、徐々に債券価格は額面価格に近づいていきます。
これら3つの要因を掛け合わせながら、その時々の市場の需給バランスに応じて、債券価格は値上がり・値下がりを繰り返します。そして、こうした債券価格の値動きが、最終利回りや所有期間利回りに影響してくるのです。