はじめに

この企業、こんなことしていたの?

かつてのイメージとまったく違うビジネスを展開し、なかにはそちらのほうが事業のメインプレーヤーとなることがあります。たとえば、富士フイルム。かつては、テレビCMでもおなじみ、カメラのフィルムが稼ぎ頭でしたが、今や、X線画像診断や内視鏡、創薬などの医療分野がメイン事業です。目薬で有名なロート製薬は、「肌ラボ」などスキンケアセクターが急成長し、今やこちらが売上の70%程度を占めています。企業が事業内容を変化していく「変態企業」は、投資家としても非常に魅力があります。

もちろん変態していくのは、それほど簡単ではありません。新規事業を開拓し、成長させていくには、相当の先行投資が必要なので、既存事業の足枷になります。それでも果敢に取り組み、成功させるのは、経営者の決断力、実行力、先見性や、それについていける従業員が必要で、一筋縄ではいきません。だからこそ、変態を成功させた企業に投資家が惹かれるのです。


宇宙事業の伸びが加速

そんな変態企業のひとつで、2024年に入って株価がうなぎのぼりのスカパーJSAT(9412)を紹介します。スカパーといえば、ほとんどの人がイメージするのは、衛星放送の『スカパー!』でしょう。1996年に、日本初のCSデジタル放送をスタートさせ、1998年には「スカイパーフェクトTV」も登録者数が100万人を突破と破竹の勢いで成長しました。2002年には300万人突破しておりますが、このあたりから登録者数の伸び率は鈍化しています。

変態の一歩を踏み出すのは、2007年。衛星管理運営会社のJSATと統合、2008年には宇宙通信(株)を買収し、宇宙事業への一歩を踏み出します。

会社四季報の特色欄を振り返ると、2019年春号までは、連結事業としてメディア71(1)、宇宙・衛星29(26)となっていますが、翌夏号では連結事業メディア60(3)、宇宙40(18)とあり、2019年3月期に、いっきに宇宙事業に振り切ったことがわかります。

ちなみに事業部の後ろについている数字は、全体の売上に対する比率で、()の中の数字は売上高営業利益率です。宇宙40(18)は、宇宙事業の売上比率が全体の40%で、売上高営業利益率が18%であることを表しています。この数字を見ると、メディア事業の利益率と、宇宙事業部の利益率の差がより分かります。当然、企業全体としては、利益率が高い事業部に注力するのが賢明です。

直近では、メディア事業部と宇宙事業部の売上比率はほぼ半々、営業利益では宇宙事業が8割以上を稼ぐまで成長しました。

宇宙事業というと、なんとなくロケット打ち上げ的なことをイメージしますが、当社の宇宙事業は、宇宙空間にある衛星を介して行う衛星通信を利用するものです。衛星通信は、地球にある受信局に一斉に配信するもので外部環境の影響を受けにくいのが最大の特長。広域に、大容量で届けられるため、自然災害時のネットワークとしても注目されています。

また、近年では、地球観測衛星で撮った画像データを加工して提供するサービスも手掛けており、これは安全保障の分野でも使われています。

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