はじめに

年末時点でも日米の政策金利は大きな開きがある?

では、米国の状況はどうでしょうか? 日銀の金融政策決定会合に続いて20日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)でFRB(米連邦準備理事会)は政策金利の指標であるFF(フェデラルファンド)金利の誘導目標を5.25~5.5%と5会合連続で据え置きました。同時に発表された経済見通しでは年内3回としていた利下げ予想を維持し、時間をかけて金融引き締めからの転換を判断する従来通りの姿勢を強調しました。2023年12月に示した前回の経済見通しでは、FOMC参加者による2024年末時点の政策金利予想(中央値)が4.6%と、今年3回の利下げを示唆していました。仮にこの見通し通りになったとしても、日本の政策金利が0.2%程度だとすると、年末時点での日米の政策金利は依然として大きな開きがあります。これでは円安の基調は変わりようがないのでは、と思われます。

しかし、そこは相場の世界です。実際の「金利差」そのものよりも、日銀の姿勢によって「方向性」を材料にするかもしれません。つまり、足元では絶対的な差があっても、その差は着実に縮小していくとマーケットが考えれば、円高に振れることもありえます。その意味で日銀の姿勢はとても重要です。

利上げは見切り発車の感が強い

そこで、あらためて今回の日銀の政策変更のタイミングや意味について、考えてみましょう。今回の日銀の政策変更については、あくまでシンボリックな意味しかないという前提でいえば、このタイミングで良かったと思います。シンボリックな意味しかないというのは、マイナス金利という不自然な、異常な政策をもう続けなくてもよくなった、ということを内外にアピールするということです。日経平均株価が史上最高値を更新し「もはやバブル後ではない」との認識が広がったこのタイミングで、日銀がマイナス金利を解除し、「もはや異次元ではない」とアピールすることで真のデフレ脱却へ弾みがつくことも期待できます。しかし、EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング:証拠に基づく政策立案)という観点では疑問が残ります。

3月25日に公表された日銀金融政策決定会合の議事要旨を読むと、

ある委員は、(中略)人件費上昇を受けてサービス価格も高い伸びを続けている、ことから賃金と物価の好循環実現の確度は更に着実に高まったと捉えられるとの見方を示した。これに対して、何人かの委員は、サービス価格の上昇等を踏まえると、賃金上昇に伴う物価上昇圧力は高まりつつあるとみられるが、「物価安定の目標」の実現が十分な確度をもって見通せる状況にまでは至っていないと指摘した。このうちの一人の委員は、賃金と物価の好循環が一段と強まっていくか、確認していく必要があると付け加えた。

と書かれていますが、まさにその通りだと思います。

サービス価格の上昇は2023年秋から横ばいで、上昇率が加速していません。前回の1月会合から今回までに得られた「新たな判断材料」は春闘の大幅賃上げだけです。その賃上げ分がサービス価格に転嫁されるかはこれから確認していくことになります。実際に、そのような指摘もあったと議事録にありますが、それなのに今回の決定に至ったというのは、1月会合での議論はどこに行ってしまったのか、という疑問が残ります。

世間的には「異論なき利上げ」と言われているようですが、筆者の意見としては見切り発車の感が強いです。繰り返しますが、今回のアクションは実態経済にそんなに大きな影響を与えないシンボリックな意味合いのほうが大きいので、まあ、よしとしますが、今後の利上げを検討する際には、ちゃんと証拠を国民に示していただきたいと思います。

すなわち、何がどうなったから「『物価安定の目標』の実現が見通せる状況になった」と判断したのか、を示してほしいと思います。そうでなければ、日銀の姿勢は「利上げありき」なのだと市場が思い込み、円安基調が円高に転換しないとも限りません。いうまでもなく、株式相場にとっても悪い影響がありますので、この点は要注目です。

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