はじめに
現状の制度はどうなっている?
では、現状の制度から確認していきましょう。報道では「加入可能年齢を65歳から70歳に引き上げる」としていますが、実際この65歳という数字には注意が必要です。なぜならば、すべての人が65歳までiDeCoの掛金を拠出できるわけではないからです。
iDeCoは公的年金と紐付いている制度なので、公的年金の被保険者であることがiDeCo加入の大前提です。つまり、65歳まで掛金の拠出ができる人は、65歳まで公的年金の被保険者であることという意味です。
もう少し詳しく説明すると、公的年金は働き方などにより3つの被保険者区分に分かれています。まず最も対象者が多いのが、第2号被保険者といって、会社員、公務員です。そして第2号被保険者の扶養の配偶者を第3号被保険者と呼んでいます。
一般的にはパートやアルバイトで働きに出ても年収130万円までは扶養でいられると思われていますが、最近は働き先の規模によりその判断基準となる年収の額がことなります。現在は従業員100人以上の会社にお勤めの方は年収106万円以上になると扶養から外れ、自らが厚生年金に加入して働くことになるため第3号ではなく第2号被保険者となります。
一方2024年10月には、さらなる改正が行われ50名以上の会社にお勤めの方も年収130万円ではなく106万円が扶養でいられるかどうかの分かれ道となります。実際は単純に年収だけで決められるわけではないので、詳しくはお勤め先に聞いていただきたいのですが、古い情報だけを持っていると間違ってしまうので念のためアップデートをさせていただきました。
そして、第2号でも第3号でもない方たちを第1号被保険者と呼んでいます。具体的には、自営業者やフリーランスといった会社員ではない働き方をしている人というイメージです。また、多くの方は大学や専門学校などに通っている時、第1号被保険者であった可能性が高いです。
実は前述した年収130万円がお勤め先の規模によって106万円に引き下げられることを「適用の拡大」と呼び、これは主に第1号被保険者の雇われている人の救済として設けられた制度なのです。
というのも先ほどご説明した通り、第3号被保険者の年金保険料は第2号被保険者全体が負担してくれているので、免除となっています。しかし、パートやアルバイトで働くことで収入が一定の水準以上になると、年金保険料が免除にはならず自らが支払うことになります。つまり、これまでと同じように働いているだけなのに、社会保険料の負担分手取りが減る、これを「年収の壁」と呼んで話題となることがあります。
一方、同じように厚生年金に加入していない第1号被保険者の保険料は自らが負担しなければなりません。例えば、ご主人が第1号被保険者で自営されている場合、奥さんが専業主婦であっても扶養とは認められず第1号被保険者として保険料月約17,000円程度を負担しなければならないのです。
このように被保険者区分によって保険料の負担方法が異なります。さらに、厚生年金は国民年金よりも手厚い保障となるので、国はいまこの格差も課題としているのです。