はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は内藤忍氏がお答えします。
夫婦共働き家庭です。生活費はそれほど高くないのですが、それぞれの小遣いが二人とも高いのではと思っています。二人ともお金のかかる趣味(旅行、ライブ巡り、楽器など)を持っていますが、できれば趣味にかけるお金はこのままがいいとお互いに思っています。その代わり子供を作る気はなく、二人だけで老後を迎える予定です。
お聞きしたいのは、手取り収入に占める平均的な小遣いの額はどのくらいかということです。夫婦のお小遣いを決める上での、一般的な考え方などについて教えていただけると幸いです。
お互いの収入はだいたい同じくらいなので、夫婦間ではできるだけ公平でありたいと思っています。また、将来のためにもう少し貯蓄に回したほうがよいのかどうかも知りたいです。性格上楽観的ではいるものの、遠い未来のことは想像が難しく、漠然とした不安を抱えています。
(1)現在の収入金額と支出の傾向
【収入】世帯収入:900万円(共働き/手取りは夫婦あわせて月60万円程度)
【支出】生活費:25万円/貯金:15万円/二人の小遣い:20万円(10万円ずつ)
(2)今後の収入金額と予測される支出
収入はゆるやかに上がるものの、大きな上昇は望めません。子供を作る気はなく、東京にずっと住む予定なので、よいタイミングで節約のために1LDK程度の中古住宅を買うことはあり得ると思っています。
(3)金融資産
・預貯金:700万円
・投資信託:300万円
貯蓄は年間150万円程度。投資にはあまり興味がなく、インデックス投資など、安定的と思われる投資を行っています。単純計算で、60歳までに6,000万円程度の資産形成ができる予定です。子供はいないため教育費もかかりません。
(4)現在の負債(住宅ローン・借金など)
賃貸で家賃は月12万円。車を所有していますが、残債はほとんどありません。
(5)保険契約
お互いに収入があるので生命保険はかけず、月5,000円の傷害保険のみ加入しています。
(30代 既婚・子供なし 男性)
内藤: ご質問ありがとうございます。
お小遣いの金額を決める、一般的なルールというものは存在しません。そのため、それぞれの家計に合ったお金の計画を立て、そのなかで、ベストなお金の使い方を考えていくことが現実的な方法です。
お金より大切なのは「夢や目標」
お金の使い方を考える前に知っておくべきことは、自分(あるいは、家族を含めた人たち)の人生の夢や目標です。
お金とは、それ自体が目標になるものではなく、自分が達成したい人生の目標を実現するための手段に過ぎません。
つまりお金という手段について考える前に、前提となる夢や目標をしっかりと定める必要があるのです。
ご相談者の場合、現状の生活水準には満足されているようです。
そうであれば、果たして予定している金融資産で将来に渡って現在と同様の生活が実現できるのか。あるいは自分の理想の将来を実現するための手段として、十分な資産であるかどうかを、腰を据えて精査する必要があります。
6,000万円で5%の運用利回りとしても年間300万円。毎月にすると25万円で、そこから税金や諸費用が差し引かれると、思ったよりも老後に使えるお金は少なくなるかもしれません。
今と将来のバランスをどう取る?
現時点の収入を今使ってしまうか、それとも将来に残していくかという選択肢は、今と将来のクオリティ・オブ・ライフのバランスを、どのように取っていくかということに対する回答でもあります。
現状の生活水準を考えれば、現時点で想定している6,000万円では足りないという判断もあり得ると思います。
その場合、考えられるのは、貯めていく資金をより高い運用利回りで増やしていくか、もしくは将来のために貯蓄額を増やし、資産を将来に送っていくかのいずれかになります。
現状の生活水準を変えたくないとすれば、保有している資産のさらなる有効活用を考えるしかありません。
運用利回りを上げるためには、今よりも大きなリスクを取り、より高いリターンを目指して資産配分を考えていくことしかありません。
例えば、都心の中古ワンルームに投資すると、金融商品より高いリターンが狙えますが、新しいリスクが顕在化することにもなります。
不動産は金融資産に比べて流動性が低く、家賃の下落リスクや空室リスクといった金融資産にはないリスクが存在する一方、その見返りに高いインカムゲインが見込めます。
また、不動産の場合は借入を使うこともできます。自己資金をあまり使わなくても、資産を膨らませていくことができ、低金利下では返済の負担もあまり大きくありません。
そのため、自分が借り入れる資金の金利と、借入金による投資対象との利回りの差による収益を狙いやすくなります。
資産運用にはさまざまな方法があります。せっかく積み上げていく元本をどのように活用するかについても、幅広い視点を持ってそのなかでベストだと思う方法を選んでいきましょう。