はじめに
経済圏の移行で注意すべき3つのポイント
経済圏を移行しても「思ったより得にならなかった」「むしろ損だった」となるのは嫌ですよね。経済圏を移行するときには、次の3つのことに注意しましょう。
●経済圏の移行の注意点1:ポイント還元率やルールの変更は頻繁にあるものと割り切る
各経済圏のキャッシュレス決済やサービスを利用したときのポイント還元率や、ポイント還元や割引を得るためのルール(条件)の変更は頻繁にあります。
たとえば、楽天グループの系列サービスを利用することで楽天市場利用時のポイント還元率がアップする「SPU」(スーパーポイントアッププログラム)の達成条件や達成時のポイント還元率は、本稿執筆時点(2024年4月22日)で2024年に1回、2023年に4回、2022年に3回、2021年に5回などという具合に、年数回変更されています。
この中には、新たにポイント還元の対象になったり還元率が上がったりしたものもありますが、対象から外れたり還元率が下がったりしたものもあります。
楽天グループに限らず、こうした還元率やルールの変更はよくあります。後から「改悪」になるかもしれない点は押さえておきましょう。
●経済圏の移行の注意点2:キャンペーンに飛びつかない
各経済圏が実施するキャンペーンのなかには、普段は得られないような高還元や割引が得られるものもあるので、うまく使えばお得です。しかし、あくまでも期間限定です。期間が過ぎればキャンペーンは終わりますし、同種のキャンペーンがまた行われる確証もありません。
たとえば、スマホ決済の黎明期に大きく話題になったPayPayの全額還元キャンペーンは、以後もたびたび開催されています。2024年2月16日〜4月15日に開催されていた「PayPayスクラッチくじ」は、買い物の際にもらえるくじによって最大で決済金額の100%(上限10万ポイント)が当たるキャンペーンでした。
たしかに当たればすごいですが、そもそも当たるかどうかはわかりません。PayPayスクラッチくじの当選確率は、所定の条件を満たすとアップさせることができました。ただ「ソフトバンクユーザーなら必ず当たる」といっても1等が必ず当たるわけではない(多くは3等(決済金額の0.5%))ですし、「ペイトクユーザーなら1等・2等の当選確率が20倍」であっても1等や2等が必ず当たるわけではありません。当選確率を上げたいからとソフトバンク・ペイトクを使って、かえって通信費が割高になってしまっては本末転倒です。
キャンペーンはお楽しみ程度にとらえておき、経済圏移行の決め手にしないようにしましょう。
●経済圏の移行の注意点3:新NISAの資産は「移管」ができない
銀行や証券会社を移行したい場合、まず移行する金融機関に口座を開設する必要があります。口座開設が終わったら、あとは銀行預金を移動するように保有している資産も移せればよいのですが、そう簡単にはいきません。
株や投資信託、債券といった資産を売却せずに他の金融機関に移す場合には、「移管」という手続きが必要です。ただし、移管にはどんなに早くても1週間程度の時間がかかりますし、移管先の金融機関で扱っていない商品は移管できません。金融機関によっては移管に際して手数料がかかる場合もあります。
さらに、新NISA口座にある資産は移管ができません。たとえば、2024年にA証券で新NISAを利用して資産を保有している人が、2025年はB証券で新NISAを利用する場合、2024年のA証券の新NISAの資産はB証券に移管できません。新NISAでは、1年ごとに金融機関を変えられるルール(金融機関の変更にも手続きが必要)になってはいますが、毎年変えてしまうと、新NISAの資産が複数の金融機関に分散してしまい、資産管理の手間が大きくなってしまいます。新NISAを利用する金融機関は、なるべく変更せずに済むようにしたほうがよいでしょう。
どの経済圏を利用するかで還元率に多少の違いはありますが、「経済圏を移行したらポイントがこれまでの10倍貯まるようになった」というような劇的な違いはありません。それに、どの経済圏のサービスも似通っているので、生活の質が大幅に変わることもないはずです。
多少の還元率の違いをメリットと感じて、手間と時間をかけて経済圏を移行しても、後からルールが変わってしまうこともありえます。もしも、上で述べたような違いで経済圏の移行を考えているのであれば、焦って経済圏を移行する必要はないと考えます。