はじめに

計画通りに資産形成ができれば良いですが、想定外にまとまったお金が必要になることもあるかも知れません。今回は特徴の異なる金融商品がある場合なにから解約したら良いのか考えてみます。


流動性の違い

例えば、預金・個人向け国債・投資信託・貯蓄型保険の4種類の金融商品を保有しているとしましょう。NISAの普及も進んだ中、比較的一般的な保有金融商品なのではないかと考えます。

預金

まず流動性の違いに着目していきましょう。お金の引き出しやすさからいうと預金は最も流動性が高いといえます。預金の引出はATMで簡単にできることはみなさんにもおなじみでしょうから特に説明も不要かと思いますが、注意点は以下の2点です。

1つ目が、残高以上の引出をすると通帳にはマイナスで金額が表示され自動融資となり金利が発生する点です。金利は金融機関によって異なりますし、上限が設定されることもあるので詳細は個別に確認が必要ですが、手軽に借り入れもできることが、メリットでもありデメリットであることは注意が必要です。

2つ目が、定期預金を満期日前に解約すると、中途解約利率といって、当初予定された金利がそのまま受け取れなくなる点です。これは、満期日までどのくらい期間が残っているのかによって、金利が異なりますが仮に1%の金利が約束された1年定期であれば、中途解約をすると1%より小さい金利しか受け取れなくなります。また利息からは20.315%の税金が源泉徴収されます。もっとも預金ですから元本は割れません。

個人向け国債

個人向け国債は、解約を申出するとおよそ3営業日で現金化されます。ただし、解約が認められるのは発行から1年経過後です。その際には、直近2回分の税引き前の各利子相当額に0.79685を掛けた金額が差し引かれます。(解約のタイミングで、多少計算が異なります)個人向け国債は、国が買い取りを約束しているので、元本割れはありません。

個人向け国債には変動10年、固定5年、固定3年の3種類がありますが、換金に関するルールはすべて同じです。また一部解約も可能なので、必要な額のみを解約することもできます。

似たような名前で窓販国債というものもありますが、こちらは中途解約の際、市場で売却をするためその時の状況に応じて損失を被ったり、利益が出たりすることがあります。つまり、窓販国債を所有しており中途換金を望む場合は、事前に金融機関でどのくらいの金額で売却ができそうなのかを確認する必要があります。

投資信託

では、投資信託はどうでしょうか? ご存じの通り、投資信託の値段は売却を申出た瞬間には決まっていません。投資信託にもよりますが、通常売却の申出をした資金の引出までは1週間前後かかります。また信託財産留保額が設定されている投資信託の場合、その金額が売却価額から差し引かれます。

NISAで運用していた場合は売却益は非課税ですが、課税口座で運用していた場合は、源泉徴収されるかあるいは確定申告で税を納めることになります。このように投資信託の場合、解約の申出をした段階で表示されている金額と実際に受け取れる金額には差異が生じることがあるので注意が必要です。

また、売却資金が指定の金融機関に直接振り込まれるのか、あるいは改めて出金指示を出さなければならないのかなど金融機関によって異なることもあります。

一方上場投資信託(ETF)は株と同じ扱いですから、売却が成立してから3営業日で現金化されます。売却の際は、指し値や成り行きも指示ができます。税金の取り扱いは投資信託の場合と同じです。

貯蓄型保険

貯蓄型保険の場合、解約の申出をしてから現金化まで1週間程度が一般的です。例えば変額保険や外貨建て保険といった「貯蓄も保障も」できる保険は、途中で解約すると解約控除がかかります。これは平たくいうと解約のペナルティで支払った保険料から保険会社がコストとして差し引くものです。特に契約から間もない解約の場合、この解約控除が大きくなり、手元の資金が少なくなるので「解約すると損」といわれる所以です。

基本的に解約返戻金は一時所得として扱われ、特別控除50万円を差し引いてもなお支払った保険料より受取る金額が多ければ利益となり所得税が差し引かれます。しかし契約期間等によっては金融類似商品として、利益と認められる金額にたいして20.315%が源泉分離課税されることもあります。こちらも予め保険会社に解約を申出る際に確認したいところです。

また保険の解約を申出すると、契約者貸し付けといって、解約せずに解約返戻金の一定以内で貸し付けを行う制度や、払い済みといって、これまで支払った保険料を元に保障内容を縮小して契約を継続する方法を勧められることがあります。契約者貸し付けについては、金利が発生しますし、払い済みにすれば必要とする保障ではなくなってしまい万が一に充分に備えられなくなってしまう可能性があります。

保険は保険料の払込期間中、中途で解約すると前述したようなペナルティが課されるのですが、昨今の株高あるいは円安で実質に受け取る解約金は支払った保険料を上回るケースもあるようです。解約の際には、保険会社に予め状況を確認した上で後悔のない選択をしましょう。

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