はじめに

所有者責任リスクを、どう対処したらよいか

それでは、こういった所有者責任リスクについて、どう対処したらよいのでしょうか。考えられる方法は、2つあります。

①火災保険に加入する
家に住む際、ほとんどの方は火災保険に加入していると思います。火災保険の中には「個人賠償責任」を担保している保険があります。これにより、例えば強風で屋根瓦が飛散して隣家を破損させてしまった場合等に、保険で賠償できるケースがあります。

この点では、仮に長らく住んでいない空き家等も、火災保険の加入によって、所有者責任リスクをある程度カバーすることが期待できます。

ただし、基本的には家屋に対する保険である為、庭木の倒木や敷地内のブロック塀の倒壊による賠償責任が含まれているか等、補償範囲については慎重に確認が必要であるほか、実際に居住していない家屋で加入できるかといった条件も保険商品によって違う場合がありますので、保険会社に対して十分に確認しておくことが求められます。

②定期的に維持管理をする
「リスクのカバー」というと、多くの方は保険商品が真っ先に浮かぶと思いますが、先にも少し触れた通り、不動産にまつわる、一般個人の方が加入できる保険といえば火災保険程度で、空き地、山林、農地といった建物のない不動産には、付保できる保険はほとんどありません。そのため、残念ながら、このリスクに対処するには「日々の維持管理をしっかりする」しか選択肢はありません。

一方、そういった不動産所有者からは、「維持管理が重要なのは分かるが、特に使い道もない不動産に、そんなに時間もお金もかけていられない」といった本音を聞くこともしばしばあります。

しかし、所有者としての管理責任をどれだけ果たしていたかが問われるという点では、少しずつでも倒木しそうな木を予防伐採したり、定期的に専門家に点検を実施して貰ったりなどすれば、年間数万円程度の出費で、青天井のリスクを大幅に軽減することが期待できます。実際に、不慮の事故が起こって賠償を求められたとしても、何もしていなかった場合と、何らかの維持管理をしていてその主張ができる場合では、その責任の重さや相手方への心象も雲泥の差になるでしょう。

今のうちから、少しずつ。

所有者としての管理責任は、例えば明らかに崩壊リスクのありそうな崖地の土地所有者だけでなく、所有者すべてに課されている重大な責任です。その意味で、土地所有者である場合には、もしもの事態になってしまう前に、今のうちから維持管理に目を向け、できることから少しずつ不安事象を解消していくように心がけましょう。

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