はじめに

二次被害に巻き込まれないためにはどうすればいいか

それでは、こういった悪質な二次被害に巻き込まれないためには、どうしたらよいでしょうか。「怪しい勧誘に惑わされないようにしましょう」といった抽象的な内容では、本質的な対策になりませんので、もう少し実践的な対策を挙げてみたいと思います。

①家族として課題に向き合う
実際に原野商法の二次被害に遭った方から聞いた中で、顕著な傾向だと感じたことは、「契約するまで、周囲には相談しなかった」ということです。悪質な業者が、意図的に冷静さを失わせ、周囲に相談する時間を与えないように契約を急かしている可能性もあります。

しかし、それに以上に「過去に原野商法で失敗した後ろめたさ」や「原野商法の土地を持っているという恥ずかしさ」といった感情から、「この問題は周囲に迷惑をかけずに、なんとか自力で解決しなくては」という心理状況が生まれやすくなっていることも原因の一つです。実際に、相続が発生してから、相続人の子供達が、故人の遺品整理中に原野商法の土地の権利書を見つけて、その時に初めて「実は親が原野商法で土地を買わされていたことを知った」ケースも珍しくありません。

尚、国民生活センターの統計によると、二次被害に関する相談者の約9割が60歳以上であり、他の詐欺的商法同様に、高齢者が狙われやすい傾向が非常に強い特徴もあります。そのため、もし自分が子世代であれば、親にとって縁のない遠方の土地の権利書を持っていないかを確認したり、こういった記事や行政の注意喚起のWEBページ、ニュース等に触れる機会を作ったりして、「もし不要な土地を持っているなら、一人で抱え込まずに、家族で処分策を考えよう」といった話題を出してみることが非常に有効です。

②契約書の事前開示を求める
不動産会社は通常、契約書の事前開示を求められれば、それに応じて冷静な状態で契約内容を確認できる機会を設けます。言い換えれば、例えば「署名する日まで契約書は見せられない」といった不穏な対応をされる場合は、依頼者にとって不都合な内容が含まれている可能性があります。その意味で、積極的に契約書の事前開示を求めることも、二次被害を未然に防ぐ有効な対策の一つと言えます。

③セカンドオピニオンを求める
不動産取引や法律に詳しい専門家に、セカンドオピニオンを求めることも有用です。

専門家であれば、勧誘経緯や業者からの提案条件などから判断して、状況に合った的確なアドバイスを得られることが期待できるでしょう。尚、先に挙げた契約書の事前開示があった場合には、契約内容の精査を依頼できる可能性もあり、より安全で冷静な判断につながるでしょう。

また、身近にそういった相談先が無い場合には、国民生活センターに相談するだけでも、参考になる情報や判断材料を得られるかもしれません。

無価値な不動産こそ、売却処分は慎重に

いかがでしたか。原野商法の土地の多くは、資産価値が極めて低く、「1円でも売れない」「売る手段はない」と諦められた土地であることが大半です。

それだけに、怪しい勧誘であっても、当事者にとっては救世主であるような錯覚や、藁をもすがる思いで早期処分してスッキリしたいという気持ちが生まれやすいといえます。

しかし、原野商法の二次被害は、不動産自体の価値ではなく、こうした「消費者の心の弱み」に漬け込んで近寄ってきます。そのため、オレオレ詐欺といった特殊詐欺などと同様の警戒意識を持ちながら、悪質な勧誘に惑わされないことが重要です。

■参考情報
国民生活センター「より深刻に!「原野商法の二次被害」トラブル-原野や山林などの買い取り話には耳を貸さない!契約しない!-
政府広報オンライン「「原野商法」再燃! 「土地を買い取ります」などの勧誘に要注意

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