はじめに

高齢化が進むことによって認知症患者も増加し、2025年には65歳以上の約5人に1人が認知症になると予測されています。患者数が増えるとともに「認知症になったら口座が凍結される」この言葉をよく聞くようになりました。

なぜ認知症になると銀行口座を今までのように自由に使用できなくなるのでしょうか。また、将来に備えてどのような準備が必要になるのでしょうか。

認知症とは、さまざまな原因で記憶や思考などの認知機能が低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすことをいいます。認知症の症状は様々ですが、たとえば何度も同じ話を繰り返したり、約束を忘れたりといった自分が行った行動を覚えていないということが出てきます。そして、自分の行動を覚えていないということは、お金のトラブルに巻き込まれることも増えてくる可能性があるのです。


認知症で増えるお金のトラブル

認知症の高齢者によくあるお金のトラブルとしては、代表的なものとして、「金銭管理ができなくなる」と「消費者トラブル」があります。

金銭管理ができなくなる例としては、

・年金支給と同時に使ってしまう
・紙幣しか使えなくなる
・ATM操作ができなくなる
・金融機関へお金を引き出しにいく回数が増える

といったことが挙げられます。金融機関で、何日も同じ金額を引き出していた顧客を不審に思った行員が声をかけ、家族に連絡を取り認知症が発覚したといったことが起こっています。

高齢者を狙った通信販売、訪問販売、電話勧誘など悪徳商法や詐欺の被害に繰り返し遭うトラブルも増えています。以前に購入した商品のことを覚えておらず同じ商品が家の中に複数見つかるといったことがあるのです。

口座取引が制限されると起こること

こういったお金のトラブルに対して、認知症高齢者の資産を守るために金融機関は口座取引の制限をかけます。これが「口座の凍結」と一般的に呼ばれるものになり、相続が起こった際の「口座の凍結」のような全面停止とは異なります。

年金の振り込みや公共料金の口座引落は継続して行われますが、引き出しができなくなる可能性があります。また、年金の受取口座を変更するには本人からの届出が必要ですが、判断能力がない状態では変更することができません。

金融機関は、客の判断能力に大幅な低下があることを知ったとき、取引を制限するとされています。どのような状況になると取引の制限をかけることになるのかは、各金融機関によって異なります。

65歳以上の約5人に1人が認知症になると言われる状況を踏まえて2021年2月に全国銀行協会が「金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方」を発表しており、基本的には成年後見制度の利用を求めています。しかし、預金者本人の生活費、入院や介護施設費用のため困っている場合、は親族が代わりに預金を引き出せるとの考えが公表されました。

この方針を受けて金融機関では親族からの依頼に柔軟に対応できる可能性がでてきました。

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