はじめに
2025年に「二人に一人の医師が漢方薬を10処方以上処方」が目標
ツムラは、2004年から「育薬」に取り組んでいます。「育薬」というのは、漢方薬の裾野を広げるための活動のひとつで、新薬治療が難渋している疾患に対し、基礎・臨床データの蓄積によりエビデンス(科学的根拠)を確立するものです。医療ニーズが高い、高齢者関連、がん、女性関連を3つの領域と定め、積極的に医療機関に情報提供を行っており、2025年には「二人に一人の医師が医療用漢方製剤を10処方以上処方する」ことを目標に掲げています。
当社の製品の中で、製品別売上高で4位に位置する抑肝散(ヨクカンサン)は、子供の夜泣きや、かんむしに効果があることで知られており、一般的にも馴染みがあります。ただ、用途が限定される上、少子化で需要の低迷が危惧されていましたが、近年では、興奮状態で怒鳴り散らしてしまう認知症患者の症状を鎮める作用が明らかとなり、一気に注目度が高まりました。高齢化が進行する中、医療機関でも処方される機会が増えてくるでしょう。
前年比で10.6%売上が増加している五苓散(ゴレイサン)も、今後のエース候補です。おもに、気圧の変化によるめまいや頭痛といった症状に使用されますが、慢性心不全による浮腫にも効果が期待できることが分かっており、活用の幅が広がっています。
シェア拡大を目指す中国の状況は?
国内の漢方薬ではシェア8割を取っていますので、さらなる拡大には海外展開がマストです。現在は、中国での売上が12%とまだまだ小さいですが、2031年度には売上比率50%以上を目指しています。
勝手なイメージですが、漢方薬は中国のお家芸のように感じます。そこに当社が分け入る余地があるのかどうか。じつは中国では、刻んだ生薬を患者ごとに調合する「飲片(いんぺん)」が浸透している一方で、高品質の標準化製剤の需要が高まっています。そこで、中国政府は、中国の伝統薬である「中薬」の規範化・規模化を図っており、そこにチャンスがあります。当社は、国内事業で磨いたノウハウをいかし、中国の中薬事業への参入を虎視眈々と目論んでいます。製剤化した漢方を中国で売るためにはライセンスが必要なため、現地の中薬企業との買収も交渉しており、絵に描いた餅とはならないと読んでいます。
設立88年の老舗が年内に上場来高値を超えていけるかどうか、ここからおもしろい展開になりそうです。
※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。
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