はじめに
2024年の3月、薬価改定のニュースでいきなりのストップ高となったツムラ(4540)。この時点では、実際にどの程度業績に影響があるかは不明でしたが、かなりのインパクトがあるのではないかという期待で株価は上昇しました。
そのとき取り上げた記事「日経平均2024年最大の下げの日に4%上昇した「ツムラ」、その理由は?」では、この先5月に発表される2025年3月期の予想に注目と書きました。仮に営業利益予想で過去最高益の231億円を超える数字を出してくれば、株価はさらに一段上を目指す展開、逆に期待値に届かなければ、株価は低迷期へ逆戻りするのではないかと予想しています。その後、どうなったか見てみましょう。
売上予想発表の翌日はストップ高だったが…
画像:ツムラ「2024年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
5月9日に発表された25年3月期の売上予想は①185,000(百万円)、②前年比22.6%、③営業利益39,500(百万円)、④前年比97.3%と、軽く過去最高営業利益を超えてきました。想定以上に薬価改定による増収増益効果が見込める予想に、翌日の株価はストップ高と好反応を見せました。
画像:TradingViewより
ところが、その翌営業日には、前日比-7.3%の大陰線で、その後もずるずると下落。5月30日には、決算翌日5月10日につけた高値4,392円から-15%の3,740円まで落ち込みました。その要因として考えられるは、以下二つです。
一つ目は、3か月ごとの営業利益の推移を見ると、直近実績24年1-3月の営業利益は876(百万円)で、前年同期比では-72.6%と大幅減益です。当社は、1-3月に営業利益が凹む季節性がありますが、それにしても前年比の減益っぷりが大きいことは、投資家にとっては心配要素です。
二つ目は、信用買い残の増加です。決算発表直後から信用取引で買う投資家が急増し、信用買い残÷信用売り残で計算される信用倍率は30倍を超えています。株価が下落している局面でも信用買い残がほとんど減少していないので、信用買いしている投資家は、歯を食いしばって耐えているか、もしくは、下げたところで、新しく信用買いをする投資家が入ってきているのか、どちらかになりますが、いずれにしろ投資家マインドはあまりよくないため、株価の上値を抑えています。
ここ最近は、4,000円程度まで株価は回復しましたが、5月10日につけた高値を更新するには、もう少し信用の買い残が減少してくる必要があるかもしれません。ただ、需給悪化による株価低迷は短期的な話で、もう少し長い目で見れば、業績に連動してしっかり上昇していくのではないかと期待できます。