はじめに
日本の半導体産業の強み
半導体産業の分野は「設計」「製造装置」「製造」「材料」の4つに大きく分かれていて、日本の半導体産業は「製造装置」と「材料」の分野に強みがあり、製造装置市場で日本はアメリカに次ぐシェアです。アメリカ35%、日本31%、欧州系22%、中国9%、韓国2%の順です。半導体材料市場は日本48%、台湾16%、韓国13%、欧州系10%、米国9%の順で日本に大きな優位性があります(経済産業省商務情報政策局「半導体・デジタル産業戦略 令和5年6月」資料より)。
現在、半導体産業は政府からの後押しが強く、積極的な支援をしています。政府は2030年までに12兆円を超える規模の官民投資を行い、「2030年までの10年間で半導体関連企業の売上高を3倍にし、15兆円超に押し上げる」目標に向けた取組みを進めるとしています。また、日本政府の誘致実現で台湾の世界最大級の半導体メーカー、TSMCの工場が24年中の生産開始を目指し、熊本県で工場建設が進められています。
かつて日本の半導体産業は活況の時代がありました。半導体産業人協会によれば、1981年、世界の半導体供給トップ10の4社が日系メーカ(NEC、日立、東芝、松下電子)で、1986年には6社(81年の4社に富士通と三菱電機が追加)がトップ10に入っていました。この6社は3年後の1989年もトップ10にランキングしています。また世界の半導体の出荷シェアも日本は1986年に46%となり、それまでトップだった米国を抜き日本が1位となり、更に1988年には50%を超えるシェアを獲得しています。
凋落からの巻き返しなるか
日本の半導体産業が躍進を続ける一方で、過去に締結された「日米半導体協定」では、日本市場における外国製半導体の比率を20%にするという購買義務が課せられるという、非常に不平等な協定を結ぶことになりました。また大型コンピュータを手掛ける企業が多かった事で、小型のパソコンブームに乗り遅れた事も痛手となりました。いわゆる「使い捨て文化」が世界的にメジャーとなり、製品を長年使えるよう丁寧なものづくりをする日本の風潮が裏目に出てしまいました。
現在のように半導体のみに特化した企業の存在は無く、総合電機メーカーが手掛けていた状況ですので上手く舵取りができなかったのも仕方がなかったことかもしれません。様々な不運が重なり、世界から大きく遅れをとった日本の半導体産業ですが、近い未来に巻き返しが起こせるのか注目しています。
なお直近の半導体セクターは、バイデン政権が、東京エレクトロン(8035)やオランダのASMLなどの半導体製造装置企業が先端半導体技術へのアクセスを中国に提供し続ける場合、最も厳しい貿易制限措置の利用を検討していると同盟国に伝えたことが報じられたことで、株価が下落しています。
またトランプ前米大統領がインタビューで、台湾防衛の責務が米国にあるのか疑問を呈したことでTSMCの株価も下落しています。
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