はじめに

会社員の場合、在職中は、勤務先が毎月の給料から所得税や住民税を天引きして、社員に代わって納税を行なってくれます。税制の知識がなくてもなんとかなるものですが、定年退職後はすべて自分で行わなければなりません。いつ、どんな税金を、どのくらい納める必要があるのかしっかりと押さえておきましょう。


定年退職した年にかかる税金の特徴、住民税の高さに驚くことも

まずは、定年退職した年に納める所得税と住民税についてです。退職した年の収入の内容は、勤務先の制度によるところではありますが、退職一時金や企業年金などの分割受け取り、その年の給与などが挙げられます。これらの収入への税金のかかり方は一様ではありませんから、それぞれのポイントを確認しておきましょう。

・退職一時金にかかる税金
退職一時金として一括で受けとる退職金は、所得税法上の「退職所得」として扱われ、給料などの他の所得と分別して所得税と住民税がかかります。このような課税方式を「源泉分離課税」と言い、退職一時金を受け取る時点で税金分が差し引かれているので、自分自身で何かを行う必要はありません。通常、退職前に勤務先から「退職所得の受給に関する申告書」を提出する旨の指示があるので、手続きを済ませておくことです。

・企業年金などの分割受け取り金にかかる税金
勤務先によっては、企業年金など退職金の分割受け取りを選択できるケースがあります。なお、企業型確定拠出年金やiDeCo(個人型確定拠出年金)を分割で受け取る場合も同様です。これらは、所得税法上の「雑所得」とみなされ課税対象となり、原則、支払われる都度、所得税(一律7.5%、所得税に対して2.1%の復興特別所得税)があらかじめ差し引かれます。ただし、他に所得がある、あるいは医療費控除などの控除を受ける場合は、別途手続きを行う必要があります。具体的には、全所得を加味して税金の過不足分の調整を行うため、翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告を行います。

その際、支給元から1月頃に交付される「源泉徴収票」を参照の上、税額を算出します。また、確定申告を行うことで税務署から居住している市区町村に情報が共有されるため住民税の申告を行う必要はありません。住民税の納付は後払い方式になります。具体的には、分納で収める場合、その年の1月~12月の住民税は、一般的には翌年6月、8月、10月、翌々年1月の4回に分けて直接納付します。

・退職した年の給与にかかる所得税
給与や賞与については、源泉徴収という形で概算の所得税が差し引かれ支給されます。なお、退職後に受け取る給与やインセンティブなどについては、在職中の給与などと分けて、別途高い税率で源泉徴収が行われます。これらについては退職後に、各源泉徴収票が元勤務先から送付されるので、前掲の企業年金のケースと同様に他の所得や控除があれば必要に応じて確定申告を行います。

・退職前々年の給与にかかる住民税
住民税については、退職時期により扱いが異なります。住民税の基本は、先述の通り後払いの仕組み。従って、退職年に納める住民税は前々年の給与に対してとなります。5月末までの退職に対しては勤務先が退職時に一括で徴収します。6月以降の退職になると納付済みとなりますが、後述の通り、前年の給与に対しての住民税が発生します。

・退職前年の給与などにかかる住民税
退職前年の所得にかかる住民税は、翌年6月から納付が発生します。一般的には、現役時代の高い給与に基づくため、市区町村から送られてくる納付書を見て驚いてしまうケースも散見されます。納め方については一括、あるいは分割の場合は会社員時代の年12回ではなく、年4回になります。

・所得税の予定納税
会社員の場合、給与収入が年間合計で2,000万円を超えるなどのケースを除き、勤務先が年末調整を行うので基本的に確定申告は必要ありません。

ただし、給与以外の所得があり確定申告を行い納税した時には、翌年、税務署から「予定納税」の通知が届くケースがあります。予定納税は、所得税の金額が一定額以上になる見込みの人が税金を先払いする制度です。前年度より所得が下がったからと自己判断して支払わないと延滞税を課されるため要注意です。

退職で収入がなくなり、所得税の見積もり額も大幅に減少する時は減額申請をして、承認されれば減税されます。最終的に確定申告すれば納め過ぎた税金は還付されますが、先払いするのが厳しい時は手続きを行なっておきましょう。

定年退職した翌年にかかる税金の特徴

定年退職した翌年にかかる税金はそれほど複雑ではありません。

所得税については、定年退職後に再就職しない人は、必要があれば確定申告を行い、源泉徴収された税額と本来納めるべき税額との過不足分を精算します。

住民税については、定年退職した年に給与や他の収入があれば、6月頃に市区町村から送られてくる納付書を使って納付します。

以上、退職後にかかる税金についてお伝えしてきました。特に、住民税は後払い方式のため時差が発生することには注意が必要です。なお、今年はイレギュラーに「定額減税」が行われます。定額減税では、所得税と住民税をあわせて、1人あたり合計4万円が減税されますが、今回の記事では定額減税については考慮していないことを付け加えておきます。

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