はじめに

離婚したいと迷った時に考えるべきこと

現在は、お金を家計に入れてくれない夫の代わりに妻が補填して住宅ローンを支払っていますが、このまま住宅ローンの返済を継続していくという選択枝は確かにあります。この状態で「円満夫婦」であれば、あくまでも夫婦間の問題と言えるかもしれません。ただ、今後、離婚も想定するということであれば、この選択は悪手となります。

では、妻が新たに住宅ローンを組むことはできるのでしょうか。そもそも、一般的に金融機関の融資では、借り手の返済能力に応じて金利を決めます。確実に返済できそうなら低く、そうでなければ高くなるのが原則です。つまり、急に所得が上がった妻では返済能力に不安があるため、そもそも融資が認められるかはわかりません。

住宅ローンを返済していく際に適用される金利は、融資実行時の金利が適用されるのが一般的ですが、「住宅ローンを申し込んだ時点の金利」か「融資が実行された時点の金利」のどちらかになるのが通常です。つまり、夫の返済中の住宅ローンと同条件ではなく、さらに悪い条件となることも考えられます。そうなれば、返済額が今よりも高くなるという可能性もあるでしょう。つまり、妻が今するべきことは、離婚を「する」と仮定し、以下の点を整理し、今後とるべき行動を検討することです。

・マンションを財産分与してもらったその後のローンを返済できるのか
・夫の代わりにこのまま返済し続けて夫と円満でい続けられるのか
・借金を支払って今の自宅に居続けることのメリットと母子家庭になったことによる公的支援によるメリットとの比較

一旦別居するという選択肢も

相談者が、「自宅マンションに住み続ける」ことにこだわっていることから、住宅ローンに照準を合わせて説明しましたが、家計収支を見ると、それ以外の問題も山積です。夫の全体の収入や支出状況を妻がはっきりと把握していませんし、携帯電話やインターネットなども契約者は夫です。食費や日用品などの日常費は、毎月夫からお金を渡された範囲内でまかなっていたため、家計簿もつけていませんでした。

このまま妻が無理をして家計を支え続けても、妻の収入だけでは自転車操業となる可能性があります。もし、離婚を考えたものの、もう少し状況を見極めたいと思われるのであれば、一旦別居をして、家庭裁判所に婚姻費用の分担調停を申し立てするという方法もありますので、ご紹介しておきます。詳細については、裁判所のHPの「婚姻費用の分担請求調停」のページを参考にしてみてください。

夫婦の資産、収入、支出など一切の事情について、当事者双方から事情を聴いたり、必要に応じて資料等を提出してもらうなどして事情をよく把握して、解決案を提示したり、必要な助言が調停委員から提案されます。合意を目指しますが、なお話し合いがまとまらず調停が不成立になった場合には、自動的に審判手続が開始されます。妻からいきなり調停にするには勇気が必要ですが、裁判所のHPに記載されている婚姻費用の算定表
は、家計を夫婦が分担する際の目安にはなります。これを見て、調停をして争うよりも、減らした金額を元に戻して家計に入れる選択を夫がするのか様子を見るのもいいかもしれません。

離婚には準備が必要

「調停」には、離婚を目的とするものだけではなく、「夫婦関係調整調停(円満)」という調停もあります。実際に離婚してしまうと、携帯電話の名義変更や子どもの健康保険など、手続きだけで非常の面倒になりがちです。大変な手続き関係で何があるのか、婚姻期間を加味した財産分与がどうなるのかなど、いきなり離婚を切り出す前にできることはたくさんあります。

今回、夫がお金を渡してくれなくなったことが原因で離婚の危機に瀕していますが、妻が将来、経済的に自立するきっかけと考えることもできるでしょう。自分が我慢すればいいとは思わず、無理をしないようにしてください。

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