はじめに
損をしても新NISAに運用方法を変えた理由は?
Aさんが、投資型年金保険から新NISAに変更した理由は3つあります。
1.すぐに現金化できる資産が今後必要になるから
家計の状況によって、適した投資商品は変わります。まずは家計を把握するために、FPにライフプランを作成してもらいました。その結果、長男が大学生になる10年後からの4年間は家計の年間収支がマイナスとなること、子ども2人が大学生になる12年後には自由に動かせる金融資産が300万円を下回ることが分かりました。教育費のかかる期間に自由に動かせる金融資産が300万円以下となることにAさんは心もとなく感じました。
投資型年金保険を含む個人年金保険は、満期までは使わずに貯めておきやすいことがメリットです。言い換えると、満期までは解約しづらい金融商品とも言えます。一方、新NISAで運用する投資信託などは、運用実績によって受取金額は変動しますが、満期がなく、いつでも好きな時に解約することができます。
2.運用コストを抑えたいから
投資型年金保険や新NISAで運用する投資信託などの金融商品は、申込時や運用期間中に、運用に必要なコストを負担しなければなりません。
Aさんが契約した投資型年金保険は、毎月3万円積み立てる際、毎回3%の費用(900円)が差し引かれた上で、残りの金額(29,100円)が運用に組み入れられる仕組みです。さらに、保険契約維持などに要する費用として、積立金額に年率1.2%が年間のコストとしてかかります。
一方、NISAでAさんが運用先として考えている世界株式に投資するインデックス型の投資信託は、毎月の積立時に手数料はかかりません。そして、運用期間中にかかる運用管理費用は年率0.058%です。長い目で見た場合、運用にかかるコストは将来の受取金額に大きな影響を及ぼします。投資商品を契約する前や別の商品と比較する際には、運用コストは押さえておくべきポイントです。
3.損失額が許容範囲だから
Aさんの契約する投資型年金保険は、契約から5年未満は所定の解約控除がかかります。
解除控除とは、保険契約を解約する際に発生する損失を契約者が負担するものです。Aさんが現時点で解約するとどうなるのかを保険会社に確認したところ、1年前から積み立てた36万円に対して、解約控除が16万円となり、実際に手元に戻る解約返戻金は20万円になるだろうとの回答でした(解約返戻金額は解約書類を保険会社が受領した時点での計算で確定となる)。
投資型年金保険を解約することで、16万円の損失となるものの毎月3万円を、仮に利回り7%で運用できれば約4年、利回り5%で運用できれば約5年で取り戻すことができます。16万円は大きな損失金額ではありますが、新NISAへ運用方法を変更することでコストを抑えられる上に、投資対象として検討している投資信託の運用実績からも損失は取り戻せる範囲内であるとAさんは判断しました。
現金化しやすい資産の必要性、運用コスト、損失額の許容度の3点から検討した結果、Aさんは投資型保険から新NISAへ変更することにしました。その結果、12年後に自由に動かすことができる金融資産は、運用方法変更前の300万円未満から900万円弱 になりました(投資信託を年率5%で運用した場合)。
Aさんは投資型年金保険を解約することにしましたが、保険会社によっては払済保険に契約内容を変更するという選択肢もあります。払済保険とは、保険料の払込期間が終わっていない保険に対して、払い込みをしない代わりに、将来受け取る保険金額を下げた保険に変更できる仕組みです。
払い済みにすることで、保険料の支払いは停止させつつ、これまでの積立金額で投資型年金保険の運用を継続することができます。払済保険に変更するには、最低保険金額や加入期間などの条件を満たす必要があります。Aさんのケースでは加入期間が短いため、払い済みができなかったので解約となりましたが、ある程度加入期間がある保険商品の場合は、払い済みの詳細について保険会社に確認してみましょう。