はじめに
高額分配を出している投資信託を見ると、「きっと優れた運用をしているのだろうな」と思われるかも知れません。でも、「分配金と(預貯金の)利息は違う」ことをまず理解しておきましょう。そうすれば「高い分配金を支払うファンドは優秀」といった誤解をせずに済みます。
定期預金の利息と投資信託の分配金との違い
何となく「利息的なもの」というイメージで考えてしまいがちなのが、投資信託の分配金です。
決算日が訪れる度に、前回の決算日からの期間中に発生した運用収益の一部を受け取れるのは、預貯金の利息に酷似しています。しかも、分配金額が預貯金の利息に比べてはるかに大きいファンドも少なくなく、少しでも高いリターンを求める個人としては、関心を持たない方が無理というものでしょう。
では、投資信託の分配金と、預貯金の利息では何が違うのでしょうか。整理してみましょう。
銀行は、預貯金を通じて集めたお金を、企業融資や個人向け住宅ローンなどとして貸し付け、その金利差の一部を、預貯金にお金を預けてくれた人に、利息として支払います。時々、貸倒れなども生じますが、それを織り込んだ融資金利で貸し付けているので、銀行預金は元本が保証されますし、利息も預入時に表示された通りに支払われます。
これに対して投資信託の分配金は、ファンドに組み入れられている株式や債券などから得られる運用収益、つまり有価証券の値上がり益に加え、株式から得られる配当金、債券から得られる利金が原資になります。
投資信託は決算日が年1回、ないし複数回設けられており、前回の決算日の翌営業日から今回の決算日までの運用収益が分配金の原資になるわけですが、分配金に回せる運用収益が1億円あったとしても、それを全額分配しなければならない、というルールはありません。次回以降、安定した分配支払を行うため、内部留保させることもできるのです。
この内部留保分を含め、前決算日の翌営業日から今決算日までの運用で得られた運用収益が、正確な意味での分配原資であり、今決算日にいくら分配するかについては、運用会社が好きなように決めることができます。