はじめに
「年金が減るから」という理由で働き方を調整するのは正しい?
「稼ぎが多いほど、年金が減らされる」という側面にフォーカスすると、在職老齢年金は60歳以降も働く選択をする方にとって、デメリットに感じられる制度でしょう。ではメリットはあるのでしょうか?
それは、会社員として働き続けることで、将来受け取る年金額を増やすことができることです。厚生年金は60歳以降も企業に勤め、要件を満たせば、70歳到達(70歳になるまでに退職すれば、退職する)まで加入することができます。60歳以降も厚生年金保険料を払い続けることで、将来の年金額が増えます。
さらに厚生年金は、国民年金とは異なり、収入に応じて年金額が増えます。この点は、働かなくなった後の老後生活に安心感をもたらしてくれるのではないでしょうか。また、60歳以降も会社員であれば、社会保険制度を利用できるので、万一のことがあっても傷病手当金や労災保険が適用される点もメリットになります。
支給停止されている部分は繰下げ受給の対象とはならない
年金は、65歳で受け取らずに66歳以後75歳までの間で繰り下げて増額した年金を受取ることができます。1ヵ月繰り下げるごとに0.7%年金が増額され、その増額率は一生変わりません。
在職老齢年金で減額(支給停止)されるなら、老齢厚生年金の繰下げで受給額を増やそうと考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、在職老齢年金によって支給停止される部分は、繰下げても増額の対象になりません。
例えば、65歳以降の在職老齢年金による支給率が平均して70%(支給停止部分が30%)という人の場合、本来受け取れるはずの老齢厚生年金のうち70%の部分だけが、繰下げ受給による増額の対象となってしまうのです。