はじめに

上場企業の社長と言えば、ビシッとスーツを着たお堅い雰囲気か、もしくはジャケットにTシャツ、素足に革靴のようなシリコンバレー風です。わたしは、企業のホームページで、社長のメッセージを読むのが趣味なので、数多くの社長の風貌を見ていますが、だいたいこの2パターンに収まります。ところが、その枠組みにまったく収まらない風貌の社長が登場し、がぜん興味が湧きました。


若くて・やりたいことができて・給与も高い「yutori」

2023年12月に上場したyutori(5892)です。名前からも察することができますが、まさに”ゆとり”世代が主役。社員の8割が20代というおそろしくヤングな企業です。興味がある方は、ぜひ社長の[片石貴展氏のプロフィール写真(https://yutori.tokyo/ir/message/)を見ていただきたい。なんておしゃれなの? 誰かが真似をできるようなスタイリングではありません。もともと片石氏の個人的な”好き”から生まれた 「古着女子」というインスタ発信で誕生した企業で、現在は31ブランドを運営、5年後の2029年3月期までには70ブランド展開を目標としています。

少し話が逸れますが、2024年の8月に韓国へ旅行して感じたのは、若者ファッションの勢いでした。日本では、お行儀のよい無難なファッションが主流で、街を歩いていても、二度見するほどインパクトのあるスタイリングを見ることはあまりありません。一方、韓国では、「こんな服見た事ない!」と思わず手にとってしまうような洋服がたくさん売られており、韓国ブランドのファッション熱を感じました。そして、その熱量を、まさにyutoriに感じます。

片石氏に密着した動画の中で、「若者の好きとか熱狂のすべてが集まる若者帝国を作りたい」と語る姿に惹かれる若者は多そうです。となれば、yutoriで働きたいと思う人材も多く集まりそうですが、当社はアパレルにありがちな、服好きの若者を安く使う、といった悪習慣には染まっておらず、平均年齢25.2歳で平均年収490万円と業界内では、非常に高い水準にあります。若くて・やりたいことができて・給与も高い、という全部取りが当社のコンセプトの吸引力は強く、優秀で熱のある若者が集まってきそうです。

第1四半期の進捗率は7.9%、でも順調か

直近発表された2025年3月期第1四半期を確認しましょう。

決算短信では、前年度との比較がわからないため、決算説明資料から抜粋します。

画像:yutori「2025年3月期 第1四半期 決算説明資料

①売上高1,114(百万円)、②前年同期比+47%、③営業利益39(百万円)、④前年同期比+106.4%と非常に高い成長っぷり。営業利益の通期予想は、500(百万円)なので、進捗率は7.9%と非常に低く見えますが、アパレル業界は、ジャケットやコートなど利益率が高い商材が下期に偏っていますので、3Q、4Qで利益を稼ぎます。前期の進捗率は5.1%でしたが、予想を上回っての着地となっていますので、今期はむしろ想定超と言えるでしょう。

最近のビックニュースは、タレントの小嶋陽菜さんが代表取締役をつとめるheart relationの株式51%を取得し、子会社化したことです。heart relationが展開するブランドは、アパレルのほか、コスメブランド、ランジェリーブランドを保有し、ターゲット層も30代とyutoriが弱い層をカバーしています。子会社化することで、yutori王国がさらに領土を広げるイメージが容易に湧いてきます。

M&Aによる業績の影響は、3Q以降に載せられるということなので、もしかしたら通期予想の修正があるかもしれません。

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