はじめに
老後今までと同じ生活をすることは意外と難しい
「投資」を「お金を増やす」というイメージで捉えている投資初心者の方を多く見かけます。このイメージ自体、間違いではありませんが、今の日本の状況を考えると、将来のお金を減らさないために「投資」をする必要があります。
Aさんが老後に実現したいことは、現在の生活水準を落とさずに生活すること、そして毎年旅行に行くことです。ライフプランを作成した結果、具体的に準備したいお金は、毎月の生活費15万円と旅行費20万円、その他20万円の年間220万円ということが分かりました。
まずは現状通り貯金のみの資産形成で、Aさんの老後の生活を試算してみると、現預金は90歳でプラス99万円の残高となり、このまま貯金を続けることで安心して暮らせる結果のように思えました。
ただし、これはインフレ率0%で作成した場合です。インフレ率とは、物価が継続的に上昇する(インフレーション)を表す指数です。日銀の目標インフレ率は2%ということをご存じでしょうか? つまり私たちは物価を上げる政策の中で日々生活をしているということになります。
今度は社会全体の物価が徐々に上がっていくことを想定して、今度はインフレ率1%でAさんの老後の生活を試算してみました。その結果、80歳で現預金は-132万円となり、1%のインフレ率だけでAさんの老後資金が尽きるまでの期間が、約10年短くなることが分かりました。Aさんにとってもたった1%のインフレで、老後の資金寿命が10年縮むというのは衝撃だったようです。
生活水準を落とすことなく、安心して老後を過ごすためには、インフレに対応するための具体的な行動をしなければなりません。その1つの手段が「投資」ということになります。
実は怖いインフレリスク
これまでコツコツと貯金をしてきているAさんには1300万円の預貯金があります。ですが、物価が上昇するとお金の価値が実質的に目減りし、保有している預貯金の価値が下がってしまいます。
たとえば、10年後にインフレで物価が2倍になったとすると、「今100万円で買える車が10年後には200万円になっている」ということが起きます。同じ物を手に入れるのに必要なお金が2倍になったということは、お金の実質的な価値が半分になったことになります。
結果的に上記で試算したように、今と同じ生活をしているだけなのに、老後資金が不足することになってしまうのです。せっかく貯めてきたお金の価値が下がってしまうことだけは防ぎたいですよね。
インフレリスクに対応するために考えられる方法は、「収入を上げる」、「支出を減らす」、「投資をする」です。物価が上がってもそれに伴って収入が増えると問題はありませんが、必ずしも物価上昇と同時に給与も上がっていくとは限りません。支出を減らすには節約が有効ですが、それにも限りはあります。そして、Aさんの「現在の生活水準を落とさず生活すること」の希望に沿わなくなってしまいます。
つまり、将来のお金を減らさないために「投資」という選択肢があることはご理解いただけると思います。