はじめに

運用期間満了の前に運用が終了するとどうなる?

さらにPayPay証券では以下のように続けています。

「弊社(PayPay証券)で取り扱っている投資信託のうち、PayPay投信 NASDAQ100インデックスとPayPay投信 NYダウインデックスについては、すでに運用会社から繰上げ償還をすることが発表されているので、10月31日15時にて新規買い付け・新規つみたて設定を終了、現在設定されている積立設定も解除する」としています。

繰上償還とは本来の運用期間満了の前に運用を終了し、その資金を投資家に返還することです。運用会社のホームページでは繰上げ償還の対象となっている投資信託はPayPay証券が扱う2本以外にもPayPay投信バランスライトと米国株式インデックスがありますが、具体的な償還のスケジュールには触れられておらず、運用が継続する限りにおいてはこれまで同様なので投資家は保有するか解約するかの判断をして下さいとの説明に留まっています。

一方ここについてPayPay証券では、今後は該当する投資信託については売却のみ可能となるため、代替えとして同証券会社で扱うそれぞれの投資信託とベンチマークを等しくするインデックスファンドを紹介しています。

とはいえ、NISAで投資可能枠上限まで消化している方については、代替えの投資信託を購入する際、非課税投資の枠はすでになくなっているので、売却のタイミングとは別に来年以降の新規買い付け時期も改めて検討するようになります。

同じ関連会社でもPayPay銀行では、アセットマネジメントの業務終了についてはなにも伝えていないようです。もちろん繰上げ償還が決定しているPayPay投信バランスライトと米国株式インデックスの個別のページも同様です。また扱いは異なりますが、運用が今後アセットマネジメントOneに引き継がれるPayPay投信AIプラスについても特段説明はありません。

一般的には運用会社に関する情報に意識を向けている人は多くはないでしょうから、販売会社である証券会社や銀行が何の情報発信もしないでいると、自分が投資している投資信託が繰上げ償還されることを知らないままの人も多いのではないでしょうか?

すると各々の償還スケジュールにのっとり投資信託が売却され資金が返還されることになります。利益がでているタイミングであれば問題はないのでしょうけれど、資金が流失したりして基準価格が低下したタイミングで売却されると思わぬ損失を被ることもあり得ます。

特にNISAで購入している投資信託の場合、特定口座での運用のように損益通算や損失の繰り越しができないので、さらにデメリットが拡大する可能性もあり注意が必要です。

PayPay証券のお知らせに戻りますが、ここで扱っている投資信託のうち以下の5本については、アセットマネジメントOne株式会社へ運用会社の変更が予定されています。

・PayPay投資信託インデックス先進国株式
・PayPay投資信託インデックス世界株式
・PayPay投資信託インデックスアメリカ株式
・PayPay投信 日経225インデックス
・LOSA長期保有型国際分散インデックスファンド

運用会社の変更とは、これまでの運用を別会社に移し継続するという意味です。すべてインデックスファンドなので、運用会社の変更により、運用の基本方針等が変わる可能性は低いといえますが、いずれにしろ詳細が発表されるのを待つしかありません。

上記5本の投資信託は、すべてNISAのつみたて投資枠で購入が可能な商品です。もともとつみたて投資枠での購入が認められる投資信託としては長期の運用を前提としているので繰上げ償還という選択肢はないのかも知れません。

例えば、PayPay投信 日経225インデックスは、つみたてNISAでの購入が可能で、信託報酬は0.143%と同じカテゴリーの中でも最安値です。運用を引き継ぐアセットマネジメントONEが運用するたわらノーロード日経225と信託報酬も同じですから、同様の運用が継続されるのかも知れません。

直接的不利益はないものの…

今回は運用会社PayPayアセットマネジメントが2025年9月を目処に業務を終了する旨をお伝えしました。運用会社が業務を終了するからといって、直接的に投資家が不利益を被ることはありませんが、やはり自身の意思に反し投資が中断されてしまう可能性があることは不利益と言わざるを得ないと思います。

しかし、筆者が見る限り今回の運用会社の業務終了のニュースはそれほど大きな関心事として捉まえられていないように感じますし、該当する投資信託を扱う金融機関の注意喚起も充分とは言えないように思います。

NISAやiDeCoが普及するにつれ、投資を始める方が増えている現在、様々な情報にアンテナをはり注意深く行動をすることは投資家の自己責任の範疇なのかも知れませんが、すべてを自己責任と押しつけてしまうのも違うのではないかとも感じます。

昨今は、投資ブームを背景に新興業者の算入も増え、競争も激化しています。信託報酬の引き下げ合戦は投資家にとってはメリットですが、それが運用会社の業績不振そして業務の終了等につながる可能性も否めません。

ぜひ読者の皆様におかれましては、今回の件をきっかけに投資信託の運用者リスクも知っていただくと共に、その対処法の理解と、今後の投資信託選びの選考にしていただければ幸いです。

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