はじめに
クラウドサービスが示した選択肢
そのひとつの回答は……「自分で開発しなくてもいい」です。
グーグルのクラウドサービスでは、同社が開発した人工知能を、さまざまな会社が簡単に利用できるようなかたちで提供しています。
先ほど例として挙げた、地図のナビゲーションや翻訳機能がアプリやホームページに簡単に実装できるのであれば、それは多くの会社にとって「助かるサービス」になるでしょう。
実際に人工知能によってサービスは便利になるのですが、一般企業にとって難しいのは、新機能を開発するためには巨額の投資を行い、人工知能にそのタスクを学習させなければならないという問題です。
そこでグーグル、マイクロソフト、アマゾンといったクラウド大手は、人工知能にさまざまなタスクを機械学習させて、独自のサービスメニューとして提供しています。
これはグーグルがグーグルマップを提供してくれるおかげで、ホームページやアプリに簡単に地図を表示できるようになったのと同じこと。これをさまざまなサービスに展開する動きがスタートしているのです。
そして実は、人工知能によるサービス提供ではグーグルが先行しています。結果、クラウドサービスの領域でグーグルのシェアがじりじり上がってきたわけです。
ただし、迎え撃つ側のアマゾンも人工知能を使ったメニューを強化しています。
クラウド×人工知能の可能性は無限大
では、今後どんなサービスが始まるのでしょうか?
たとえば音声認識によるテキスト変換は、スマホに入力する際に便利ですが、これをさらに人工知能でパワーアップさせることができます。
アマゾンが提供するスマートスピーカーで人気なのが、冷蔵庫の前で「トマト、キャベツ……」と買わなければいけないものの名前を呼び上げておくと自動的に買い物リストを作ってくれるサービスです。
消費者はリストを見ながらスーパーを回ってもよいですし、アメリカでは生鮮食料品の宅配サービス「Amazonフレッシュ」につなげて、その場で買い物を終わらせることまでできます。
ほか、業務用のアプリでは、画像認識や動画分析もあると便利です。画像認識を学んだ人工知能を使って、会社の入館ゲートのセキュリティチェックや出退勤の管理を顔認識で済ませることもできます。
秘書機能も、機械学習を済ませた人工知能が使えれば一段と便利になります。グーグルカレンダーをスケジューラーとして普段使っている方も多いと思いますが、GPSと組み合わせると「来客が近づいている」とか「自分がアポイントに遅れそう」といったことがわかります。
こんなふうに進化したカレンダーでは、あなただけの“AI秘書”が「鈴木です。申し訳ございませんが、中央線の遅延により到着が15時04分頃になりそうです」と約束の相手に自動的にメールを送ってくれるようになるかもしれません。
そして、これは決して遠い未来の夢物語ではありません。「こんな便利なサービスが安価に使えるので、ぜひ我が社のクラウドを使ってください」というサービス合戦が今、3社の間で勃発しているのです。