はじめに
高額療養費制度を利用しても自己負担は意外にかかる
実際に入院治療した場合、自己負担はどのくらいかかるのでしょうか? 1例をあげて考えてみましょう。
入院治療は短期化の傾向にあるといわれていますが、病気の種類や重さによって長期に渡る場合もあります。厚生労働省「令和5年病院報告」によると、一般病床の平均在院日数は15.7日です。
胃がんで入院した例
女性45歳 胃に不調を覚え内科を受診。医師から総合病院を勧められ、検査の結果胃がんと診断。他の臓器への転移はなかったが、胃の全摘手術を行った。術後の抗がん剤治療も含め15日間の入院となった。9月3日に入院。入院後3日目に手術。手術後2日間ICUでの治療を受けた後、退院まで個室を希望。空きがあり、10日間は個室を利用し9月17日に退院。この女性の高額療養費の適用区分は上記の表区分ウでした。
医療費の自己負担額:2,200,000円×3割=660,000円
高額療養費の自己負担限度額:80,100円+(2,200,000円-267,000円)×1%=99,430円
上の計算式により、高額療養費を使う前の自己負担額は660,000円ですが、高額療養費制度適用により、99,430円を超える560,570円が支給され、自己負担額は99,430円となります。
高額療養費制度の対象外で入院にかかった費用は、以下のとおりです。
差額ベッド代:6,600円×10日=66,000円
入院セット:550円×15日=8,250円
合計:86,500円
医療費にかかる自己負担額と合算すると185,930円です。他にも入院となると目に見えない出費がかさむものです。退院後の自宅療養を考えると、収入減も考えられます。健康保険や高額療養費制度は、病気やケガの際、強い味方ではありますが、無料になるわけではありません。ある程度の貯蓄、民間の医療保険などの備えが必要ではないでしょうか。