はじめに
3月期決算企業、約2500社の決算発表が10月下旬から続いていました。今回は決算発表と同時に自社株買いを公表する企業がより一層増えました。
2023年、東証が上場企業に促した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の公表以降、株主還元策を積極的に行う企業が増加傾向にあります。
損害保険大手4社が政策保有株をゼロにする方針
株主還元を行うにあたり、企業が持っている政策保有株を売却・縮減した資金を株主に振り向ける策が取られています。政策保有とは、企業が取引先との関係維持や買収防衛といった経営戦略の目的で保有する株式で、投資目的で保有しているわけではありません。
政策保有は安定株主になりうる側面が強い一方で、無意味に保有され続ければ、資本効率の悪化を招きます。2024年2月に金融庁は損害保険大手4社に政策保有株の売却を急ぐよう求めました。
その結果、東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険の3社が2029年度末までに、損害保険ジャパンは2030年度末までに政策保有株をゼロにするとしています。4社の保有額は以下の通りです。
上位銘柄はトヨタ、三菱商事、ホンダなど
・三井住友海上:1兆7479億円
上位銘柄はトヨタ、伊藤忠、三井物産など
・あいおいニッセイ同和:8282億円
上位銘柄は信越化学、伊藤忠、第一三共など
・損保ジャパン:1兆2541億円
上位銘柄は信越化学、伊藤忠、ホンダなど
4社の合計は6兆2460億円です。
2023年12月、金融庁は大手損保4社が保険の販売先である顧客企業と関係を保つために株式を保有するなど、もたれ合いの関係を続け、談合などにより本来行われるべき入札での価格競走を避けてきたと指摘しています。
また、その後の経過で損害保険大手4社が企業や自治体などとの契約で保険料の事前調整を行うカルテルや談合を繰り返していたことが明らかになりました。公正取引委員会は合わせて20億円余りの課徴金の納付を命じました。