はじめに

60歳代世帯における金融資産保有状況を見ると、3,000万円以上という方が20%以上いる一方で、同程度の割合で資産を保有していないと答えた方もいます。就労収入にも限界があるなか、貯蓄0円からの老後資産作りは本当に可能なのでしょうか?


「資産を創るための」の行動が必要

金融広報中央委員会の調査(2023年)によると、世帯主が60歳代の世帯における金融資産保有額は平均で2,026万円となっています。しかし、詳細を見ると、3,000万円以上あると答えた方が20%以上いる一方で、まったく持っていない「非保有」と答えた方も21%という結果になりました。つまり、老後資金の準備状況には大きなバラツキがあるといえるのです。

ただでさえ老後に不安を抱えている方が多く存在する中、老後を目前に控え蓄えがないとすると暗澹たる気持ちになってしまうのも無理はありません。

そのような不安に配慮してか、「60歳からでも無理なくお金が貯まる」といったようなタイトルの書籍や記事など、最近は多く見受けられます。それを見ると、現時点で貯蓄がまったくなくてもなんとかなるのかと思ってしまうかも知れませんが、なんとかなるわけがありません。書籍を手にとってみただけではなんともならず、「資産を創るための」の行動をおこさないとなんともならないのです。

金融資産保有状況の違いで3つのパターンを検証

では、どのような行動変容が必要なのか? 60歳だからとあきらめずに、定額での積立をiDeCoとNISAを利用して実行する「積立期」、その後はしばらく運用のみを継続する「運用期」、そして取崩を開始する「取崩期」の確保、そんなお金の「三段活用」が必須です。この三段活用の具体例として金融資産保有状況の違いによって3つのパターンを検証しました。

一つ目は、退職金をNISAで運用するパターン。退職金を5年に分けて投資し75歳までに2000万円を作ります。

二つ目は、65歳まで就労を継続し、その収入からiDeCoに積立を行うパターン。退職金と公的年金の繰下も利用し、実質1800万円のメリットを享受します。

三つ目は、70歳までの就労を見込みながら、NISAとiDeCoを活用し、60歳時点で貯蓄が0円であっても、新たに1000万円を確保します。

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