はじめに
2. 65歳まで就労を継続、その収入からiDeCoに積立を行うケース
二つ目のパターンを見ていきましょう。ここでのポイントは65歳までの就労により生活費を確保します。その間退職金を運用し、さらに公的年金を繰下により不足しがちな資金を年金でカバーします。
まず就労継続する5年間は、節税も兼ねてiDeCoで会社員の掛金上限である月23,000円を積立します。65歳になると受け取りが可能になりますが、運用は75歳まで継続します。仮に5%運用が可能であれば75歳時点での資産は254万円です。
iDeCoの場合、NISAのように口座をずっと保有することができません。75歳までに一括で受け取るか、分割で受け取るかを決定します。
分割の場合、年金保険のような商品に移し換えて5年や10年の確定年金とすることもできますし、投資信託での運用を継続しながら取崩を行う設定もできます。例えば10年で取崩をする場合は、1年目は資産の10分の1を解約し、2年目は9分の1を解約し、10年目で全部の資産を解約するといった具合です。運営管理機関によって取り扱いは異なるものの、事前に設定することによりストレスなく資金を受け取ることができます。
一方、75歳という年齢は公的年金の受け取りもあるので、iDeCoを分割で受け取るとさらに課税される金額が大きくなることも考えられます。課税される金額が多くなるとその分負担する社会保険料、さらに医療費や介護費の自己負担割合が高くなることがあります。そのような場合は分割受け取りを選択せず一括受け取りの方が税金等の負担を抑えることが可能です。
60歳からの積立期間である5年間は、退職所得控除を計算する上での勤続年数として読み替えられます。5年x40万円=200万円ですから、254万円の資産のうち課税対象は54万円となります。
iDeCoの場合、この54万円もさらに2分の1され年金収入とは切り離して課税されるので結果所得税は13,500円、住民税は27,000円、合計40,500円の納税で済みます。退職金扱いなので、254万円は社会保険料の算定対象にもなりませんから、この場合、分割受け取りよりも一括受け取りの方が有利に受け取れます。
70歳までの就労が可能であれば、公的年金は70歳まで繰下げます。それにより65歳時点の年金額より1.42倍増額された年金を受け取ることができます。
額面ベースとはなりますが、一般的な会社員の例で70歳から90歳まで20年間の受け取り総額は、65歳から受け取る年金総額より600万円も多く受け取ることが可能です。
仮に退職金から500万円でも運用に回せるのであればNISAを利用します。ここでも一括投資ではなく月20万円の積立投資を実行します。5%の運用が可能であれば25回の積立を終了時点で資産は527万円です。それを75歳まで運用を継続すると1000万円ほどに資産を増やすことができます。
つまり、就労収入と退職金の積立と運用、そして公的年金の繰下を実行することで、1800万円ほどのメリットの享受が可能、これが二つ目の試算です。