はじめに
画像:くら寿司「2024年10月期決算短信〔日本基準〕(連結)」
2024年12月11日、くら寿司(2695)が、2024年10月期の本決算発表を行いました。①売上高234,950(百万円)②前年比11.1%でこれは過去最高を更新です。③営業利益も5,699(百万円)、④前年比132%と、大幅な増益となっており、文句なしの着地。とくに売り上げの80%近くを占める国内が好調で、業績を押し上げています。
ところが、決算発表翌日には、株価は-15.8%と大きく下落しました。その理由は、ふたつあります。
株価が下落した要因とは
画像:くら寿司「2024年10月期決算短信〔日本基準〕(連結)」
ひとつは、新年度予想である2025年10月期は、①売上高は243,000(百万円)、②前年比3.4%とかろうじて増収ですが、営業利益は、③5,000(百万円)、④前年比-12.3%と二桁の大幅減少となったことです。
ちなみに会社四季報秋号で掲載されていた25年10月号の予想営業利益は8,500(百万円)なので、その数字を見ていた投資家のがっかり具合は、相当大きくなります。
もうひとつは、株主優待の廃止です。今までは、100株以上で2,500円相当の優待割引券がもらえるということで、個人投資家からは優待銘柄としても人気だっただけに、廃止のニュースには大激震が走りました。廃止の理由は「配当を含めた株主の皆様への公平な利益還元のあり方という観点から」とあります。これは、株主優待を廃止する理由としてよくあげられます。
くら寿司のように株主優待の内容が、店舗で使う割引券の場合は、機関投資家や外国人投資家は実際に使用するのはむずかしく、その恩恵は、ほぼ個人投資家のみが受けることになります。また、株主優待を実施するためのコストは、企業の利益から支出されるため、結果的にすべての株主の利益に影響を与えます。となると、株主優待を実際に利用できない投資家にとっては、不公平というわけです。グローバル化を進める企業にとって、外国人投資家からそっぽを向かれる要素は排除したいという本音もあると思われます。
株主優待を廃止する企業の多くは、その分を配当金で還元しますが、くら寿司の場合、新年度の配当予想は据え置きでした。それも、翌日の株価下落を大きなものにしたのでしょう。
くら寿司が、減益予想とした理由は、人件費と食材などの原材料価格の上昇です。こういった費用の上昇は、価格転嫁でこなせればよいのですが、カジュアルに通える価格が魅力の回転寿司だと、安易な値上げは客数を減らしてしまうリスクが大きいのかもしれません。