はじめに

一般的に安全な資産とされている「債券」。それを組み入れて運用するファンドも少なくありません。株式型ファンドに比べて安全と思われている債券ファンドですが、それは本当でしょうか。


公社債投信は現状1種類のみ

投資信託は、何を組み入れて運用するかによってリスク・リターンの度合いが違ってきます。一般的に株式を組み入れて運用するタイプは価格変動リスクが高く、債券を組み入れて運用するタイプは価格変動リスクが低いと見られています。

債券は、償還まで保有すると額面価格で元本が戻ってくるという特性を持つことから、元本割れリスクがないなどと誤解している人もなかにはいます。しかし、債券を主要投資対象としているファンドでも、元本を割り込むケースはあるのです。

まず、投資信託を投資対象別に分類すると、株式投資信託と公社債投資信託に二分できます。このうち公社債投資信託は現在、1種類しかありません。

かつては「長期公社債投信」、「短期公社債投信」、「中期国債ファンド」、「MMF」、「MRF」というようにさまざまな種類の公社債投信が設定・運用されていました。しかし、多くのファンドが投資環境の変化で元本割れとなり、そのまま繰上償還されていきました。現在、公社債投信の分類で運用され続けているのは「MRF」のみです。

もちろんMRFも投資信託の一種ですから、預貯金のように元本保証を謳うことはできません。ただ、組入債券は信用力が高く、かつ償還までの平均残存期間が90日以内のものになるため、元本割れリスクはほぼないと考えて良いでしょう。

債券に投資する株式投資信託もある

ここまで読んで、「じゃあ、米国国債などに投資している投資信託は公社債投信ではないの?」という疑問を持った方もいらっしゃると思います。

そうです。米国国債など外国債券を組み入れた投資信託は、公社債投資信託には分類されず、株式投資信託に分類されるのです。なぜなら公社債投信の場合、「基準価額が1万円を割り込んだ時は、1万円を回復するまで追加設定が認められない」というルールがあるからです。

しかし外国債券を組み入れて運用するファンドの多くは、そもそも為替変動リスクがありますし、組入債券の償還までの残存期間が長いため、金利変動リスクの影響も受けます。

ちなみに金利変動リスクですが、債券は金利が上昇すると債券価格が下落します。償還時には額面価格で償還金が戻ってきますが、償還までの間は金利変動にともなって市場で売り買いされる債券価格が、株価と同じように変動するのです。そして、その評価額がファンドの基準価額に反映されるため、金利が上昇するほど組入債券の債券価格が値下がりし、基準価額にも下落圧力がかかるのです。

また外国債券を組み入れて運用するファンドの多くは、為替リスクをヘッジしないのが一般的です。当然、円高になれば円ベースの組入債券評価額が値下がりするため、これも基準価額の下落要因になります。

もし、為替レートが円高になり、かつ金利が上昇したことによって、外国債券を組み入れて運用するファンドの基準価額が1万円を割り込んだとしましょう。

しかし商品の分類が公社債投信だと、前述したように1万円を回復するまで、追加設定ができません。このファンドを買いたいという投資家が現れても、買えなくなってしまうのです。それでは運用商品として都合が悪いので、為替リスクがある債券、あるいは償還までの残存期間が長い債券を組み入れて運用するファンドは、主要投資対象が債券であったとしても、商品の分類は株式投資信託になるのです。

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