はじめに

繰上返済を考えた時に検討すべき他の選択肢

1.借り換え
まず、繰上返済を考える前に借り換えによって支払利息を節約できないか検討してみましょう。今よりも低金利のローンへの借り換えも、支払利息を節約する方法の一つです。借り換えのメリットには以下のようなものがあります。

・金利の引き下げによる総支払額の削減
・返済期間の見直しによる毎月の返済額の調整
・団体信用生命保険の見直しによる保障内容の改善

▼借り換えの手順
1.現在の住宅ローンの条件を確認する
2.金融機関から借り換えの見積もりを取る
3.借り換えにかかる諸費用を計算する
4.借り換えによる節約額と諸費用を比較検討する
5.借り換えを決定したら、必要書類を準備し、申し込みを行う

借り換えには諸費用がかかるため、借り換えによる節約額と諸費用を比較検討する必要があることを忘れないように注意しましょう。また、現在住宅ローン控除を受けている場合、借り換え後も住宅ローン控除を受けるには一定の要件を満たす必要があるため、事前に確認を行うことが必要です。

現在利用している住宅ローンの金利が高い方、特に借り換え前後で金利差が1%以上あるような場合は、繰上返済の前に借り換えも検討してみましょう。

2.余剰資金の運用
繰上返済の代わりに、余剰資金を運用に回すという選択肢です。特に、住宅ローンの金利が低い場合、運用によって得られるリターンが繰上返済の金利削減効果を上回る可能性が十分あると考えます。

例えば、住宅ローンの金利が0.5%で、運用による利回りを5%と仮定した場合、繰上返済するよりもその資金を運用したほうが資産は増えることになります。具体的にどの程度金額が変わるのか比較してみたいと思います。

金額5,000万円、期間40年、金利0.5%の住宅ローンを、返済開始10年後のタイミングで5年分・約601万円繰上返済した場合と、601万円を年利5%で運用した場合で比較してみましょう。

繰り上げ返済した場合
・繰上返済した場合、約89万円の利息削減効果です。

運用した場合
・住宅ローン完済までの残り25年間運用したとした場合、約2,035万円となり、運用益が1,400万円以上となる計算です。

ただし、投資には「リスク」があることを忘れてはいけません。期待した収益を得られない可能性や最悪の場合、元本割れをして損失を被る可能性もあります。そのため、以下の点に注意して運用を行うことが重要です。

・長期的な視点を持つ
・分散投資を心掛ける
・自身のリスク許容度を把握する
・定期的にポートフォリオを見直す
・投資に関する知識を継続的に学ぶ

老後の資金準備が不十分な方や、運用できる期間を長期間取れる方は余剰資金の運用も検討するとよいでしょう。運用を選択する場合は、自身の資産状況やライフプランに合わせた運用戦略を立てることをおすすめします。

最後に、繰上返済は必ずしもすべての人にとって最適な選択肢とは限りません。緊急時の資金が十分に確保できていない場合や、教育費など大きな支出が数年後に控えている場合は、繰上返済することよりも資金を確保しておくことの方が優先度は高いでしょう。

ご自身の経済状況やライフプラン、将来の見通しなどを総合的に判断し、最適な選択ができるための選択肢を知っていることが大切です。必要に応じて、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談するのもおすすめです。

「余剰資金は繰上返済」と決めつけてしまうのではなく、その都度自分にとって最適な方法を検討しましょう。

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