はじめに
オフィスビルや商業施設、倉庫、レジデンスなどの不動産物件を組み入れて、その家賃収入を分配金にするJ-REITの利回りが上昇しています。そのなかには9%という高利回りのファンドもありますが、はたして危なくないのでしょうか。検証してみたいと思います。
低迷続いた2024年のJ-REIT市場
2024年、8月に瞬間、大きな下落に見舞われたものの、1年を通じて見れば順調に値上がりした国内株式市場とは裏腹に、低迷続きだったのがJ-REIT市場です。2024年末時点で、配当込みTOPIXは20.45%の値上がりでしたが、配当込みの東証REIT指数は、▲4.04%という惨憺たる結果に終わってしまいました。
東証REIT指数が下がったということは、指数構成銘柄の多くが値下がりしたことを意味します。J-REITの投資口価格が下落すれば、高値で買った人は損をするので決して喜ばしいことではありませんが、これから投資する人にとっては、ひとつだけ大きなメリットがあります。それは、高い分配金利回りが期待できることです。
2025年1月15日時点で、東証に上場されている全J-REITの分配金利回りを平均すると、5.13%になります。インフレの影響で若干、金利が上昇傾向にあるとはいえ、預貯金で年5%の利回りが得られるものはありません。株式でも配当利回りが5%を超える銘柄は少ないでしょう。それが「平均」で得られるのですから、利回り狙いで投資する人にとってJ-REITは、なかなか魅力的であると考えられます。
分配金利回り9.33%の秘密
平均ということは、それを下回る分配金利回りのファンドもあれば、逆に上回る分配金利回りのファンドもあります。
1月15日時点で、最も分配金利回りが低いのは「日本アコモデーションファンド投資法人」の3.87%です。対して最も高いのが「いちごホテルリート投資法人」の9.33%です。
いちごホテルリート投資法人は、その名の通り、ホテルを組み入れて運用しています。そのため、新型コロナウイルスの感染拡大で行動制限が行われていた期間中は、組み入れているホテルの稼働率が大幅に下がり、分配金も減額されました。
分配金の実績を見ると、2019年7月期が3154円、2020年1月期が8356円だったのが、2020年7月期は670円、2021年1月期は823円まで落ち込んでいます。そこから徐々に回復し、2025年1月期は9671円(予想)、2025年7月期は3563円(予想)が支払われる予定です。この9671円と3563円の合計1万3234円を、1月15日時点の終値である14万1700円で割ると、9.33%という分配金利回りが算出できます。
ただ、9.33%が今後も続くのかというと、今回はいささか特殊事情があります。2025年1月期の分配金が大きいのは、ファンドに組み入れていた「ネストホテル札幌駅前」を、2024年12月に売却したからです。これを売却したことで21億8100万円の売却益が発生し、それが分配金に反映されたのです。