はじめに
老後の資産運用に適したJ-REIT
いちごホテルリート投資法人の9.33%という分配金利回りは、このような特殊事情によるものですが、その特殊事情が無くなる2025年7月期の予想分配金額である3563円が今後も続くと仮定すると、年間の分配金は7126円。1月15日の終値で分配金利回りを計算すると、5.02%になります。これだけの利回りが実現するならば、資産活用層の投資対象としては、十分に魅力的だと思います。
J-REITはNISAの成長投資枠で買い付けることができます。成長投資枠の限度額である1200万円ぴったりまで買うことはできませんが、それに近い額まで買い付けて、5%の利回りで回せれば、年間60万円の分配金を非課税で受け取ることができます。月にして5万円です。65歳以降に受け取れる公的年金に毎月5万円が上乗せされれば、それなりに老後の生活も安定します。
ただ、老後資金の一部をJ-REITで運用する場合、ひとつだけ注意点があります。それはJ-REITが投資法人という法人であることです。法人である以上、その経営が苦しくなれば破綻、もしくは他のJ-REITとの合併というケースも出てきます。だいぶ前の話ですが、2008年10月には「ニューシティ・レジデンス投資法人」が、資金繰りの悪化で民事再生法適用を申請しました。
J-REITが破綻したらどうなる?
ニューシティ・レジデンス投資法人は民事再生法適用を申請した後、同年11月に上場廃止になりました。ただ、2009年11月にはビ・ライフ投資法人(現、大和ハウスリート投資法人)と合併し、ニューシティ・レジデンス投資法人の投資口1口に対し、ビ・ライフ投資法人の投資口0.23口が交付されたことから、投資口の価値がゼロになる事態は避けられました。
これは、J-REITならではのメリットかも知れません。これが上場企業の株式だと、民事再生法が適用されるのと同時に100%減資を行い、新スポンサーから出資を受けるのが普通です。つまり既存の株主が保有していた株式の価値はゼロになるのですが、J-REITの場合、ファンドに組み入れられている物件の価値は維持されているので、投資口の価値がゼロになることはありません。
それどころか、新スポンサーの下で業績が好転していけば、むしろ投資口の価格が上昇して、キャピタルゲインを狙えることもあります。実際、ニューシティ・レジデンス投資法人の投資口価格も、それを引き継いで大和ハウスリート投資法人に名称変更したビ・ライフ投資法人の投資口価格が上昇し、破綻騒動が始まる前の水準まで戻しました。
もちろん、投資する以上は投資法人の財務内容をしっかりチェックする必要はありますが、J-REITは保有物件の価値がしっかり残るので、ある意味、破綻リスクに強いという特性を持っています。その点でも、長期の資産運用には比較的向いている商品と考えられるのです。
※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。
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