はじめに
扶養を維持するために開業届は出さなくてもよいのか
扶養から外れてしまうのであれば、開業届は提出しない方が良いのではないかと考えるかもしれません。ですが、個人事業主として仕事をするのであれば、開業届の提出はしなければならない義務です。ただし、提出しないことによる罰則などはなく、開業届の提出がなくても確定申告を行うことができます。
罰則がないのであれば、扶養を外れる方が社会保険料の負担が増えて手取りが減って損してしまうので、開業届を提出するメリットがないと感じてしまうかもしれませんが、必ずしもそうではありません。
確定申告には白色申告と青色申告の2種類があり、開業届を提出すると青色申告が可能になります。青色申告には大きな節税効果があり、次のようなメリットがあります。
①所得から最大65万円を差し引くことができる
②赤字を3年間繰り越すことができる
③家族の給与を必要経費に入れることができる
④少額減価償却資産の特例を受けることができる
所得金額によっては、①を活用すると所得税を抑えることができるので、開業届を出さずに白色申告する方が損する可能性があります。また、事業を始めたばかりで赤字の状況でも、②を活用すれば将来の節税に繋げることができます。たとえ社会保険の扶養から外れたとしても、将来的に事業を拡大していく予定であれば、開業届を提出して青色申告した方がメリットは大きい場合もあるのです。
扶養内で在宅ワークを始めるのであれば事前計画が大事
扶養内で在宅ワークを始めていきたいと考えているのであれば、開業届を提出する前に、配偶者の健康保険組合へ社会保険の扶養基準がどのようになっているのか確認することが大事です。開業届を提出した時点で扶養の対象外となる場合、開業届を提出することで社会保険料の支払いを自分で行う必要が出てくるため、家計の手取りに影響がでてきます。
開業届を提出した時点で扶養から外れるのであれば、どのような家計状況になるのかライフプランを作成してみるとよいでしょう。
- 社会保険料をいくら負担することになるのか
- どのくらいの売上が必要になるのか
- 社会保険料の負担を補う家計の余裕があるのか
など、家計全体のバランスを見ながらライフプランを作成すると、在宅ワークで必要な売上目標を決めることができます。何も知らずに開業届を提出して、いきなり扶養から外れてしまうと社会保険料の負担が大きくなりますが、事前に把握して計画を立てられていると焦らなくてよくなります。
扶養を維持した状態で在宅ワークを始めていきたいと考えているのであれば、「開業するんじゃなかった…」と後悔してしまう前に、社会保険の扶養条件を確認してから開業準備を進めていきましょう。