はじめに

繰上返済は最適解? 事例に学ぶ対策のヒント

これからの金利上昇に備えて、繰上返済がよい選択となるのかどうかは悩ましいところです。変動金利型住宅ローンの基準金利引き上げに、異なる対策を取ったAさんとBさんの事例をご紹介します。

AさんとBさんはどちらも変動金利型住宅ローンを利用していました。家族構成は違いますが、借入額は約8,000万円、借入時期も似ています。どちらも基準金利の0.2%引き上げをうけ、毎月返済額が5,000円増加しました。

Aさんのご家庭では金利上昇に備えて、500万円の期間短縮型繰上返済を実行しました。ローン残高を大きく減らすことはできましたが、毎月返済額はわずかに月400円減っただけ、短縮できた返済期間は7ヵ月でした。そのうえ、Aさんの手元資金は500万円減ったため、資産の流動性が低下しました。Aさんは繰上返済後も金利上昇の不安を消すことができず、むしろ将来に不安を抱えることとなりました。

一方、Bさんは繰上返済ではなく、毎月返済額の増額を検討することにしました。末子の進学先が決まったこと、今後必要な教育費に目処がつきそうであること、家計にゆとりがあったこと、必要な備えを準備できている状況をふまえ、筆者と一緒に返済額増額後の家計の見通しを投影し、家計に無理がないことを確認した上で決定しました。Bさんのご家庭はこのところの物価上昇をふまえても、家計は十分対応可能な状態でしたが、返済の先送りは極力避けたいと考えていました。Bさん夫婦は銀行に相談し審査を経て、毎月返済額をみずから2万円増やしました。返済期間は2年短縮することができました。報告くださったBさんの晴れやかな表情が印象的でした。

心地よく暮らすために大切な考え方

利息の支払いをできる限り避けたい気持ちは多くの方に共通するものですが、繰上返済にはメリットと同時にデメリットもあります。繰上返済は多くの方に知られている方法ですが、いわゆる大技です。厳しいいい方になってしまいますが、適切に住宅ローンを利用できている方であれば、繰上返済といった大技はつかわなくとも対応できるケースは多いはずです。
もし、これからの金利上昇を想像して、利息負担が増えることに不安があるなら今からでも返済計画を含めた住宅資金計画を見直した方がいいでしょう。

家はわたしたちの暮らしをつくるパズルのピースの1つです。心地よく暮らすために最も大切なのは、「描いた自分のライフプランを実現できること」です。その実現の後押しとして住宅ローンを活用するのがいいのではないでしょうか。

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