はじめに

インデックス運用が良いのか、それともアクティブ運用が良いのか、という議論がかまびすしいのですが、実際はどうなのでしょうか。今回から複数回、この問題について考えてみたいと思います。


情報の非対称性とは?

「情報の非対称性」という言葉をご存じでしょうか。これは取引参加者の間で、与えられている、あるいは持ち得る情報の量と質に大きな差があることを意味します。

個人の資産運用に関していえば1990年代の初頭、個人が株式の「板情報」を見ることはできませんでした。証券会社の顧客のなかでも一部の優良顧客が株式の発注を行う時だけ、その営業担当者が支店の電話を場立ちにつなぎ、板情報を聞いて、有利なプライスで発注するという程度でした。今のように、インターネットで板情報がリアルタイムで取得できるような環境ではなかったのです。その時代において、個人と機関投資家との間には、明らかに情報の非対称性が存在していました。

しかし、株式取引における情報の非対称性は、だいぶ解消されたように思えます。板情報もさることながら、企業の決算情報、決算説明会の映像情報など、株式取引に関しては、インターネット証券や企業のサイトを通じて、個人でもかなりのレベルまで情報が取れるようになっています。株式取引においてはほぼ、情報の非対称性は無くなったと考えてよいでしょう。

優れたアクティブファンドは選べない

でも、依然として情報の非対称性が無くならない分野があります。それが投資信託です。

まず、現在運用されているファンドのすべての情報を、一括で取得できる術がありません。販売金融機関においては、自社が扱っているファンドの運用成績、現在の基準価額、純資産総額といった基礎的情報をサイトに乗せていますが、投資信託は株式と違い、販売金融機関によって扱っているファンドもあれば、扱っていないファンドもあります。つまり販売金融機関のサイトを見ても、現時点で運用されているすべてのファンドのデータを比較することができないのです。

比較する術がなければ、少なくとも定量面からファンドを選ぶことができません。これがアクティブファンドを選ぶうえで、大きなネックになっています。

アクティブファンドとは、簡単にいえば日経平均株価やTOPIX、あるいはS&P500といったインデックスに対して、それを上回るリターンが実現できるようなポートフォリオを構築して運用されるファンドのことです。その目指すところは、飽くなきアルファの追求であり、対ベンチマークでどれだけオーバーパフォームできるかが、アクティブファンドの存在意義といっても良いでしょう。

しかし、長期的にベンチマークをオーバーパフォームできるアクティブファンドを選ぶためには、さまざまな情報が必要になります。

過去の基準価額、純資産総額の推移といった定量データはもちろんですが、たとえば運用会社の運用哲学、ファンドの運用方針、運用担当者やトレーダーの資質、リスクマネジメント体制などの定性データも必要です。これらを一覧できるだけの情報があるのかというと、実は存在していないのです。

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