はじめに

税の負担を軽減する3つの方法

多くの方は、税金は少しでも節約したいと思うところでしょうから、ここから受け取り方法を工夫して税金の負担を圧縮する方法を検討していきます。

退職金を受け取った翌年に受け取る

ひとつ目は、退職金を受け取った翌年にiDeCoあるいは企業型DCを受け取る方法です。このように受け取り時期をずらしたとしてもiDeCo(以後企業型DCも同様)の加入期間10年は退職金を受け取る際に重複期間として消滅しているので利用できません。

しかし、退職金扱いとなるiDeCoを翌年に受け取る場合、たとえ利用できる退職所得控除がゼロであったとしても退職所得控除は最低80万円が認められるルールがあるため、その分だけは老齢給付額から差し引くことができます。

400万円-80万円=320万円、さらに2分の1ですから160万円に対して課税されることになります。これまで同様に計算すると所得税は80,000円、住民税は160,000万円、合計240,000円となり62,500円ほど同年受取の場合より税金の支払を減らすことができます。

分割で受け取る

二つ目は、iDeCoを分割で受け取る方法です。400万円を60歳からの5年分割とすると年金額は80万円となり公的年金等控除を利用することが可能です。iDeCoの分割年間80万円は、65歳までの公的年金等控除60万円と基礎控除額48万円を合計した金額の中に収まりますから非課税で受け取ることができます。

もし60歳以降も就労収入がある場合は、超過した分は総合課税、つまり給与所得などと合算されて課税されます。その場合は、老齢給付400万円のうち300万円は60歳から5年間の分割とし、残り100万円は61歳で受け取ります。すると毎年の年金額は公的年金等控除額と同額の60万円なので非課税、そして100万円の一時金は前述した通り80万円の退職所得控除を差し引き、超過分の2分の1、この場合は10万円が課税対象となりますので、所得税5,000円、住民税10,000円、合計15,000円の課税となり、ずいぶん税負担を減らすことができます。なお、一括と分割の併用受取は金融機関により、できないところもあるので、予定される方は事前にお問い合わせ下さい。

60歳で受け取らず、引き続き加入する

三つ目は、iDeCoは60歳で受け取らず、引き続き加入する方法です。定年後も65歳までは働く方も多いでしょうから、継続拠出を行い、所得控除を受けるメリットは大いにあるでしょう。

企業型DCは加入資格を喪失すると継続することはできませんので、iDeCoに改めて加入することになります。その際企業型DCの資産はiDeCoに移換することができます。一般的には定年退職の場合、企業型DCの資産を運用指図者として企業型にそのまま残すことができますから、iDeCoと企業型DCの両方を持ち続けることも可能です。しかし受け取りの際に、いくつか注意点もあるため、今回はiDeCoに移換するという前提で説明をします。

60歳以降5年間、iDeCoに継続加入をし、65歳でiDeCoの老齢給付金を受け取ります。その5年間の掛金は所得控除のメリットを最大限活かすために上限いっぱいまでかけても良いですし、最低額である月5,000円でも、5年間の加入により新たに退職所得控除200万円を利用できるようになります。

今回は65歳時点でiDeCoの老齢給付金は450万円になったとしましょう。200万円の退職所得控除を差し引いて差額の2分の1が課税となりますので、125万円に対して税金がかかることになります。これまでと同様に計算をすると所得税62,500円、住民税125,000円、合計187,500円の税負担となります。

あるいは退職所得控除額と同額の200万円だけ一時金で受け取り、残り250万円を分割にすることもできます。分割は5年、10年、20年の期間を選ぶことができるとする金融機関が一般的ですから5年を選べば年間50万円ずつの受け取りとなります。

65歳以降の公的年金等控除を利用すると110万円までは非課税で受け取ることができます。しかし老齢年金を受け取ると合算して公的年金等控除を差し引きますから、課税額が多くなる可能性があります。その場合は、公的年金を繰下するなどの対策も検討すると良いかも知れません。

注意点として、退職所得として受け取る場合は、健康保険や介護保険料の対象とはなりませんが、年金受け取りだと社会保険料の対象となります。また毎年の受け取り額が大きくなるとそれに応じて健康保険や介護保険の自己負担額も重くなる可能性もあります。

老後の生活防衛として考えると、iDeCoはできるだけ退職所得として受け取り、その後の生活資金やNISAでの運用にあてるなど上手に活用したいものです。場合によっては高齢期まで負担が続く住宅ローンの返済に充てることが有効な場合もあります。

そろそろiDeCoの受け取りを考えている方が、今回の記事を参考に受け取り方を検討していただけるとうれしいです。また今後もiDeCoの積み立てを継続する方には、iDeCoの出口戦略のひとつとして記憶にとどめておいていただけると幸いです。

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