はじめに
株式相場には、その年々にまつわる「アノマリー(経験則)」や、イベントに関連する傾向が存在します。有名なところでは、「干支」に関するアノマリー。「巳年」の2025年は“辰巳天井”で、「株価が天井を付けやすくなる年」とされています。ここでは、やや遅ればせながらではありますが、「巳年」に関するアノマリーのほか、「米大統領選挙の翌年」の相場の傾向を紹介しましょう。
「干支」に関するアノマリー
干支に関する相場のアノマリー、格言といえば「辰巳(たつみ)天井、午(うま)尻下がり、未(ひつじ)辛抱、申酉(さるとり)騒ぐ、戌(いぬ)笑い、亥(い)固まる、子(ね)は繁栄、丑(うし)つまずき、寅(とら)千里を走り、卯(うさぎ)は跳ねる」が有名です。
意味をざっくり説明すると、「辰年と巳年は株価が天井を付けやすく、午年は下落傾向。未年は辛抱する相場。申年と酉年は値動きが激しくなりやすい。戌年は笑うほど相場が良く、亥年は落ち着いた相場展開に。子年は上昇相場が期待できる。丑年は相場がつまずき、寅年は相場が荒れやすいが、卯年で跳ねるように上昇しやすい」という感じです。江戸時代の「コメ先物相場」発祥で、戦後の証券業界によって広められたとのこと。
コメ先物と株式相場ではまったく性質が異なるため、そのまま株式相場に応用することには違和感がありますが、第二次世界大戦後の株式相場では、辰年の上昇率が十二支のうちで最も高く、その上昇率は平均で約27%。その翌々年の午(うま)年の平均が、マイナス約5%と十二支で唯一マイナスになっていることを考えると、まったくのデタラメではなく、ある程度はその年の相場の傾向を表しているといえそうです。少なくとも、戦後の80年間は「辰巳天井(辰年と巳年で株価が天井を付ける)」の傾向があるのでしょう。「はっきりとした論理的な根拠はないが、統計的にそういう傾向になりやすい」のが、まさに「アノマリー」なのです。
過去の「巳年」は相場の重要な節目になりやすい
「巳年」を振り返ると、不動産バブルの真っただ中だった1989年、ITバブルの崩壊が続く2001年、黒田前日銀総裁による異例の大規模金融緩和(黒田バズーカ)で「アベノミクス相場」が幕を開けた2013年と、株式相場においてかなり重要な節目の前後に当たる年になっています。
2024年は、日経平均株価が年初の3万3000円前後から7月に4万2426円まで上昇。その7月に「令和のブラックマンデー」と呼ばれる暴落が相場を襲いましたが、その後はすぐに反発。再び4万円台に乗せるなど、波乱はあったものの総じて好調に推移した年になりました。背景には、世界的な「AIブーム」によって半導体関連株が急騰したことや、米国株相場が絶好調だったことがあります。
特に、ハイテク株が多い米国のナスダック株価指数の上昇はすさまじく、2024年初頭の1万4000ポイント台後半から、年末には2万ポイントを突破。世界のIT・ハイテク関連株の株価を押し上げたことで、金融関係者からは1990年代後半のITバブルになぞらえる声も上がっています。
株式相場のアノマリーの観点では、「辰巳天井」の「辰」は好調が続いていたことを考えると、巳年の2025年は何か大きなターニングポイントとなる出来事が起きるかもしれません。現状では、そのきっかけとなりそうなのが、後述する「米大統領選挙の翌年」や「米金融政策が利下げに転換」の2つ。いずれにしても、株式相場が好調に推移していても、何らかの相場の転換点が訪れる可能性を意識しておくといいでしょう。