はじめに
値動きを抑えつつリターンを高める①株に加えて金(ゴールド)に投資
暴落中や調整相場の値動きを抑えたいならば、金(ゴールド)に投資しておくのがひとつの手です。
S&P500と金価格の値動きを確認してみましょう。金価格は、金ETF(上場投資信託)の「SPDRゴールド・シェア(GLD)」で確認することにします。以下は、2007年1月3日時点を「100」として指数化しています。
<S&P500とGLDの日次データ推移(2007年1月3日〜2025年2月25日)>
各種データを元に(株)Money&You作成
赤丸で囲ったところが、「リーマンショック後」と「コロナショック後」の動きです。
株式市場が下落している時期や伸び悩んでいる時期に、金価格は上昇する傾向にあることが見て取れます。S&P500と金(ゴールド)を50%ずつ保有した場合は、株価暴落・調整局面でもリターンが得られていて、値動きもマイルドになっていることがわかります。
時間を味方につけた資産形成には「株」が欠かせませんが、暴落時への値下がり耐性を高めつつリターンを高めるならば、「金(ゴールド)」をポートフォリオに組み込むのは効果が高いといえるでしょう。
新NISAで金(ゴールド)に投資するならば、低コストのファンド・ETFを選びましょう。オルカンやS&P500は投資信託を通じて、円ベースで投資をしているわけですから、金(ゴールド)も円ベースでまったく問題ありません。
低コストファンドには「SBI・iシェアーズ・ゴールドファンド(為替ヘッジなし)[信託報酬:年0.1838%]や「ゴールド・ファンド(為替ヘッジなし)」[信託報酬:年0.407%]があります。東証上場ETFには「iシェアーズ ゴールド ETF (314A)」[信託報酬:年0.22%]などがあります。
最近は、金価格高騰により投資ニーズが高まっていることもあり、金(ゴールド)と米国株に投資するファンド、金(ゴールド)と世界株に投資するファンドも誕生しています。これらを活用すれば楽に分散投資ができますが、信託報酬が高かったり、過度にリスクを取りすぎたりしてしまいます。
金と世界株に投資するファンドには、2024年12月20日に新規設定された「明治安田ゴールド/オール・カントリー株式戦略ファンド(ゴルカン)」[信託報酬:年1.023%]があります。金と世界株へ分散投資が手軽ですが、信託報酬が割高です。
金と米国株に投資するファンドには「Tracers S&P500ゴールドプラス」[信託報酬:年0.1991%]や「Tracers NASDAQ100ゴールドプラス」[信託報酬:年0.2189%]があります。コスト面では申し分ないのですが、どちらもレバレッジ型の商品であるため新NISAでは投資ができません。値動きを抑えつつリターンを高めるのが目的であるならば、レバレッジ型を選ぶ意義は少ないでしょう。
値動きを抑えつつリターンを高める②暴落対策として「高配当株」「連続増配株」
暴落中や調整相場の値動きを抑えたいならば、「高配当株」「連続増配株」に投資するのも有効です。
高配当株とは、株価に占める配当金の割合(配当利回り)が高い銘柄のこと。一般的に、配当利回りが3%を超えると高配当といわれます。連続増配株とは、配当金の金額を毎年増やしてくれる銘柄のことです。
暴落中や調整相場も安定して配当金がもらえるので、リターンが得られ続ける点が精神的に嬉しいポイントです。そうした特徴から、市場全体の暴落が起こると、高配当株や連続増配株に注目が集まり、買いが殺到するので値下がりはある程度抑えられます。暴落してもそこから一足早く回復する傾向があるのも特徴です。
ただし、配当利回りの高さや連続増配年数だけで飛びつくのはNGです。配当利回りの計算式は「年間予想配当金÷株価×100」なので、株価が下がって配当利回りが高くなっている、不人気な銘柄や業績の悪化した銘柄が入っている可能性があります。連続増配にしても無理して増配を続けている銘柄かもしれません。業績は好調なのか、財務は健全なのかの確認は必須です。
個別株に抵抗がある人や、分散投資を意識して複数の高配当株・連続増配株に投資をするのが面倒だという人は、ファンドやETFを活用しましょう。
定期的に分配金を受け取れる日本高配当株の低コストファンドには「SBI日本高配当株式(分配)ファンド(年4回決算型)」[信託報酬:0.099%]や「Tracers日経平均高配当株50インデックス(奇数月分配型)」[信託報酬:0.10725%]があります。
つみたて投資枠でも高配当株ファンドに投資をしたい場合には、「日経平均高配当利回り株ファンド」[信託報酬:年0.693%]が本稿執筆時点で唯一の選択肢です。こちらは年2回分配金を受け取れます。
定期的に分配金を受け取れる米国高配当株の低コストファンドには「SBI・V・米国高配当株式インデックス・ファンド(年4回決算型)」 [信託報酬:年0.1238%]、「SBI・S・米国高配当株式インデックス・ファンド(年4回決算型)」[信託報酬:年0.1238%]、「楽天・高配当株式・米国ファンド(四半期決算型)」[信託報酬:年0.192%]などがあります。
定期的に分配金を受け取れる日本連続増配株の低コストファンドには「iFreeNEXT 日経連続増配株指数(年4回決算型)」[信託報酬:年0.451%]があります。米国連続増配株だと「SBI・V・米国増配株式インデックス・ファンド(年4回決算型)」 [信託報酬:年0.1238%]、「iFreePlus 米国配当王(年4回決算型)」[信託報酬:年0.286%]などが候補になるでしょう。