はじめに
テクニカル分析の活用──移動平均線・クロスシグナルの読み方
株式市場では、上昇局面から下落局面へ、あるいはその逆へと転換するタイミングを見極めるために、テクニカル分析が広く活用されています。その中でも一定期間の株価や為替の価格(終値が一般的)の平均値を結んだ「移動平均線」は、基本かつ重要な指標のひとつです。
200日の平均値を結んだ「200日移動平均線」は、市場の中長期的なトレンドを分析する際に用いられる代表的な指標で、200日線を上回っている時は上昇トレンド、下に割り込むとトレンドの転換が意識され、下落転換のサインと見なされることが多いです。また、移動平均線の傾き自体も重要です。例えば、株価が一時的に200日線を割り込んだとしても、200日線が右肩上がりであれば、あくまで上昇局面の中の一時的な下落、いわゆる押し目と捉える見方もあります。移動平均線が横ばい、または下向きに変化すると上昇トレンドのモメンタム(勢い)が低下していると見て、転換の可能性を考えた方がよいでしょう。
さらに、50日移動平均線や75日移動平均線などの中期的な指標も活用されます。これらが200日線を上から下に突き抜ける「デッドクロス」が発生したときには、下落局面入りの可能性が高いという警戒シグナルとして受け止められます。逆に、下から上に抜ける「ゴールデンクロス」は、上昇局面への転換点とされ、強気のサインとされます。
また、「パーフェクトオーダー」は、初心者でもわかりやすい指標となります。移動平均線が上から短期・中期・長期という順番で並び、3本の傾きが右肩上がりであれば上昇トレンド、上から長期・中期・短期の順番で並び、3本の移動平均線の傾きが右肩下がりであれば下落トレンドと判断します。例えば買うのであれば上昇トレンドで、その状態が崩れたら利益確定や損切りをする、という投資判断をすれば暴落で資産を大きく減らす可能性は少なくなるでしょう。
このように、前述のファンダメンタルズ分析とテクニカル分析をあわせることで、今が転換点なのかどうかを見極めることは、短期的な売買はもちろん、長期投資においても非常に有用です。
米大統領の政策と、市場への影響
さて、2025年4月、トランプ大統領の政策により市場は下落転換、しかもボラテリティがとても高い荒れ模様となりました。トランプ大統領は当選後、減税や規制緩和、またはその期待によって強気相場を牽引しましたが、その一方で関税政策(米中貿易戦争)によって市場のリスク要因を高めました。とくに注目すべきは、関税措置と対中強硬姿勢が、極めて短期間で市場の雰囲気を一変させた点です。4月7日には米主要株価指数先物が急落し、ダウ先物、S&P500の先物がともに最高値から20%超の下落で弱気相場入りし、一時的にですが、これまでで最速ともいえる「強気相場から弱気相場への転換」を見せたことになります。
かねてから、アメリカ大統領の政策は世界の金融市場に大きな影響を与えてきました。2001年に就任したブッシュ政権、さらに遡って1977年に就任したカーター政権でも、大統領就任後に株価が急落しています。政策によっては低迷が長く続くことを想定しながら投資する必要があるでしょう。