はじめに

年金を減らさない、増やすためのポイント

年金制度は、長く働くことや賢く制度を活用することで、受給額を減らさず、むしろ増やすことが可能です。ここでは2つのポイントを解説していきます。

①60歳以降の働き方と年金の関係
60歳以降に老齢厚生年金を受け取りながら働くなら、おさえておきたいのが「在職老齢年金制度」になります。在職老齢年金制度とは、老齢厚生年金の月額と月給・賞与(直近1年間の賞与の1/12)の合計額が51万円を超えると、年金が減額されます(2025(令和7)年度)。なお、老齢基礎年金は減額されず、全額受け取ることができます。

在職老齢年金制度は、シニア世代の就労意欲を損なうとの指摘を受け、減額基準の引き上げについて議論がなされています。しかし、在職老齢年金制度によって、老齢厚生年金が減額されることがあるものの、会社員として働き続けて厚生年金保険料を納めることは、将来の年金受給額の増加に繋がります。

また、年金は原則65歳から受給できますが、年金の繰下げを活用し、受給開始時期を遅らせることで、1カ月ごとに0.7%ずつ年金額が増額されます。繰下げた期間に応じて年金額が増え、その増額率は一生変わりません。

たとえば、70歳まで繰下げると42%増額され、75歳まで繰下げた場合には、最大84%増額することが可能です。健康に自信があり、60代も働くことができる環境にある方にとっては、繰下げ受給を活用することで、将来の年金額を増やすことができます。ただし、在職老齢年金制度によって支給停止される分については、繰下げによる増額の対象とならないため、注意が必要です。また、繰下げ受給をした方が、早期に亡くなった場合、増額効果を享受できず、結果として受給総額が少なくなってしまう可能性もあります。健康状態やライフプランを踏まえたうえで、受給開始時期を慎重に検討することが大切です。

②制度の活用
公的年金に加えて、企業や個人が加入できる年金制度として確定拠出年金(DC)があります。確定拠出年金は、企業年金の一つで事業主が掛金を拠出する「企業型年金(企業型DC)」と個人で加入して本人が掛金を拠出する「個人型年金(iDeCo)」の2つのタイプがあります。

確定拠出年金は、加入者ごとに拠出された掛金を加入者自らが運用し、その運用結果に基づいて給付額が決定される年金制度です。掛金拠出時、運用時及び給付時において税制優遇があります。確定拠出年金制度は、老後資金をしっかり準備するには積極的に活用したい制度の一つです。

また、確定拠出年金だけではなく、NISA制度を活用することで、老後の資金を効率的に増やすことも可能です。2024年からは新しいNISA制度がスタートし、生涯で最大1,800万円まで非課税枠が利用できるようになりました。

NISAで投資した投資信託などは、確定拠出年金と異なり、基本的には自分のタイミングでいつでも解約して現金化できる点も大きなメリットといえるでしょう。ただし、価格変動のある投資信託などに投資することになるため、解約時に元本を下回るリスクがある点には注意が必要です。

将来安心した老後生活を送るためにも、ご自身に合った対策を早めに始めることがポイントになります。

今からできる3つの行動

昨今の物価上昇や少子高齢化の影響により、老後の生活に不安を感じる方も多いかもしれません。だからこそ、今から計画的に行動することが大切です。最後に今できる3つの行動についてお伝えします。

1つ目は、自分が将来受け取る年金額を正確に把握することです。日本年金機構から送付される「ねんきん定期便」を活用することで、将来の年金額を確認できます。50歳未満の方には、年金加入期間やこれまでの加入実績に基づいた情報が記載されており、50歳以上の方には、老齢年金の種類や見込額等が記載されています。

さらに、「ねんきんネット」に登録すれば、パソコンやスマートフォンから自分の年金記録をいつでも確認できます。また、条件を設定することで、将来の年金見込額のシミュレーションも可能です。まずは、自分の年金額を正しく把握することからスタートしましょう。

2つ目は、60歳以降の働き方を考え、年金を増やす選択肢を検討することです。働き続けることで厚生年金の加入期間が延び、将来の年金額が増える可能性があります。

3つ目は、自助努力で資産形成を行い、将来の年金を補うことです。そのために、確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)やNISA制度を活用し、税制優遇を受けながら計画的に資産を築いていきましょう。これらの行動を早めに実践することで、将来の不安を軽減し、安心した老後を迎えるための備えができるでしょう。

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